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Diary

自分が暮らした町の物語を、そこに暮らす人たちを書いてみたいと思っている2017年07月31日

◆小雨。ジメジメした日。フローリングがぺたぺたするよ。
◆30歳の誕生日に「小説家になろう」と決めて妻にも宣言して(何故かと言うと子供が寝たら一人部屋に篭ることが多くなるだろうから)初めて小説を書き出した。それまでにも創作めいたもの書くことはあったけれども作家になろうなんて思ったことは一度もなかった。でも、小説家が主人公のマンガ西岸良平さんの『鎌倉ものがたり』は好きでずっと読んでいた。
◆古都鎌倉が魔物と幽霊と人間が共存するような街という設定で、ファンタジーというよりは本当にいい意味でぬるいおとぎ話のようで、何でもありのミステリなので、気に入って全巻揃えて何度も読み返している。売れない推理作家の一色さんと可愛い奥さんの亜紀子さんのほのぼのとした暮らしは読んでて楽しいし、主人公が最後のヒトコマで通行人でしか登場しないようなストーリー展開も、ひたすらのんびりしていて良い。もちろん今も連載中で、続刊はどんどん出ている(今は34巻)。
◆その『鎌倉ものがたり』が実写映画になる。主役の二人は本当にイメージピッタリだし、ストーリー展開はきっと映画らしくエンタメ感たっぷりになるだろうけど、魔物が普通に暮らしているもうひとつの〈鎌倉〉が描かれるのは楽しみだ。
◆若い頃に思いっ切り影響を受けたテレビドラマ『俺たちの旅』は吉祥寺と東京が主な舞台だったけど、それに続く『俺たちの朝』は鎌倉の極楽寺駅近辺が舞台だった。なので、小さい頃に一度だけ行ってとても印象に残っていたのもあって、鎌倉は憧れの町でもあった。大人になってから何度か訪ねて、僕の小説の舞台にも多く出てくる。
◆東京、横浜、鎌倉、吉祥寺、尾道、ニューヨーク、ロスアンジェルス、サンフランシスコ、ロンドン、パリ、アイルランドにスコットランド、アフリカ。映画や小説やドラマやマンガで訪れていた遠い町は全部憧れの町だった。世界中を旅したい、なんて思ったこともあったけれどこの年になるともう無理だし、実際に行くよりそこに思いを馳せてその町の物語を楽しんだり書いたりする方が性に合っているようだ。
◆今までも書いてはいるんだけど、そのうちに自分が暮らした町の物語を、そこに暮らす人たちを書いてみたいと思っている。

ドラゴンクエストが出てしまった2017年07月29日

◆暑い日。夜になっても窓を少し開けていないと暑い。
◆ついに〈ドラゴンクエスト11〉が発売されてしまった。困った。締切りを山ほど抱えているのだ。抱えているのにもちろん買ってしまっている。ただし北海道なので我が家に到着するのは明日だ。明日来てしまうのだ。もちろん私は大人だ。わりと変な人も多い小説家という職業ではあるがその中でも良識も分別も社会性もある方だと自負している。北の紳士作家と呼んでもらってもかまわない(なんだそれ)。なので、いきなり朝からのめりこんで原稿を書かないということはない。たぶんないと思う。ないんじゃないかな。
◆僕らの年代がゲームに出会ったのはもう高校生になっていて、いわゆるゲーセンのスペースインベーダーが最初の頃だ。ファミコンを買ったときにはもう大人になっていたけど思いっ切りハマってしまった。初めてドラゴンクエストをやった頃にはもう長男が生まれていて、妻と二人で子供の面倒を見ながら寝不足になっていた。長男がはいはいをし始めたときには何度リセットボタンを押されて妻と二人で肩を落としふっかつのじゅもんをメモした紙に涙を落としたかわからない。今でも、テレビCMでドラクエのテーマが流れると妻も私も思わず顔を上げ血が沸き立つものだ。それぐらい、人生の中でも大きなウエイトを占めているのがドラゴンクエストというゲームだ。
◆一時期、ゲーム業界にも身を置いた。何本か参加したゲームが世に出ている。何事もなければあと二十年以上は生きていけるとは思う。その間にゲームがどんなふうに進化していくのかは常に注目している。ただ、どんな時代になっても人が娯楽を求める根底には物語があると思う。物語は人類最古の娯楽だ。今までもそうだったし、これからもそうだろう。
◆とりあえず、明日はやらないよ。原稿書かなきゃ。やらないったら。

夏休み、中高生のための創作教室2017年07月27日

◆晴れ。暑いけど夜になればぐっと涼しい北海道の夏。
◆窓を開けていても寝苦しい夜なんかシーズンに一度か二度。まぁそんなになくてもいいんだけどね。でも少しはあった方が金鳥の蚊取り線香も活躍できる。いや実は毎年の夏に金鳥の蚊取り線香を蚊遣り豚で焚いているけど、蚊ってあんまり見かけないんだよね我が家。まぁ最初から網戸から中に入ってこられないっていうのもあるかもしれないけど、家の中で蚊を見たことなどほとんど記憶にない。
◆〈北海道立文学館〉というところ、毎年夏休みに〈中高生のための創作教室 文学道場〉というのを3日間やっている。そこで講師を勤めているのだ。もう5年とか6年とかそれぐらいやっているのでそろそろ他の方に替わってもらってもいいんじゃないかと思うのだが(^_^;)。まぁ夏休みの子供たちに会えて話ができるのは良い刺激になって楽しいといえば楽しいのだが。
◆正直なところ、とんでもない才能に出会ったりはしていない。でも、皆が締切りまでに自分の物語を仕上げている。それだけでも大したものだと思う。僕が中高生の頃なんかそんなこと思いもしなかった。〈小説家になれるかどうか〉の最低限の基準は〈最初から最後まで物語を書けるかどうか〉だと思う。本当になれるかどうかは才能と運次第だけど、少なくとも物語を最後まで書ける子にはその資質はある。実際のところ、文章を書くのが得意な人でも物語を一本仕上げるのはかなり難しいことなのだ。
◆中学生なら、文章の基本を守って楽しく書ければそれでいい。高校生にはもう少し厳しく言っている。独りよがりではいけない。言葉を正しく使おう。きちんと調べよう。何よりも、読者がいることを忘れないようにしよう。楽しんでもらえる物語に仕上げよう。何度も繰り返し言うのは、登場人物には歴史がある、ということだ。18歳の高校生が主人公なら18年間の人生があり、その向こうには家族がいる。性格は環境が作る。たとえば優しい男の子なら、どうしてその男の子は優しい男の子に育ったのかをきちんと考えなきゃならない。だから、必ず家系図を書かせている。物語に登場しなくても、その男の子のお父さんお母さんがどういう人物かも考えさせている。
◆物語って、そういうことだ。
◆小説家になんかならなくてもいいから(^_^;)、物語をずっと好きでいてほしい。

音楽があるから、僕の物語が書ける。2017年07月22日

◆晴れたり曇ったり。
◆相変わらず締切りに追われていて日記の更新も間が空いてしまう。夏本番になる前に記録的な暑さが続いていたけれどここのところは落ち着いている。まぁ北海道の夏はこんなものよね、という感じだけどあまりにも暑かったものだから一気に夏が終ってしまった感もなきにしもあらず。まだ7月なんだからもうちょっと短い夏を楽しませてくれよ。
◆仲良くしてもらっているミュージシャン〈踊ろうマチルダ〉くんが遊びに来た。プライベートなことなので詳しくは言えないけど、遊びに来られる環境なのだ。以前に会ったのは4年前のRSR(ライジングサン)のときだったので、4年ぶりか。マチルダくんは、7年ぶりのオリジナルフルアルバムの完成間近で、そのデモを持ってきてくれたのだ。ありがたくじっくり聴かせてもらった。詳しいことは9月に発売になってからここでじっくり書こうと思うけど、傑作だ。素晴らしいアルバム。代わりといってはなんだけど僕の新刊を上げたヽ( ´ー`)ノ
◆インディーズのミュージシャンと小説家はフリーという立場ではまったく同じだ。たとえば〈踊ろうマチルダ〉は日本各地のライブハウスでライブをやってお客さんからお金を貰う。小説家で言えばそれは出版社から依頼されて原稿を書いて原稿料を貰うのとまぁ同じだ。ミュージシャンはアルバムを作ってそれを売ってお金を得る。小説家は連載が終わったら単行本にしてもらって印税を得る。まぁ同じだ。ライブと連載で日銭を稼いで、アルバムと本でまとまったお金を稼ぐのだ。何より同じなのは、ファンの皆さんが自分たちの作品を愛してくれるから、喰っていけるのだ。本当にありがたいよね、と二人で頷きあっていた。
◆そんなような話をしながら、マチルダくんは僕の家にあったアコースティック・ギターをぽろぽろ弾いてくれたけど、ミュージシャンになりたくてなりたくて、でもなれなかった男としては本当に羨ましくてしょうがない。彼の指先から音楽が溢れ出してくるのだ。まぁそれを言ったら僕も指先から物語を紡ぎ出しているのだけど。〈踊ろうマチルダ〉くんは僕よりも二十歳も若い。息子と言っても通用する年齢だ。彼がこの先にどんな音楽を紡ぎ出していってくれるのか、楽しみでしょうがない。
◆僕は、音楽なしでは生きられない。音楽があるから、僕の物語が書ける。

夏の少女2017年07月14日

◆暑かった。明日も暑いらしい。
◆しかし夏は暑いものだ。暑いからこそ夏なのだ。そしてその夏を思いっ切り愉しめる10代20代の頃の僕らの夏と言えば山下達郎さんだった。大瀧詠一さんもそうだったし少し後になってサザンオールスターズも出てきたし人によっては矢沢永吉だろ! という人もいるだろうけど、僕は山下達郎さんだった。写真はその山下達郎さんの名盤『COME ALONG』が何十年ぶりかで新作で帰ってくる『COME ALONG3』だ。この夏はこれを聴いて35年以上も前の青春の頃の夏を思いだそうかと。暑いけどさ。
◆北海道の夏は短い。最近でこそ温暖化の影響なのかこういう猛暑日が続いたり寝苦しい夜があったりもするけど、それでもあっという間に終ってしまう。学校が夏休みに入るのが7月の25日ぐらいで、それからお盆になるまでのほんの二週間ぐらいが〈夏本番〉だった。まぁその何もかも解放感に満ちあふれる夏の間にいろいろとバカなことをやってしまうのが若さであって、その短い夏の間にあんなことやこんなことやそんなことをいろいろやってしまってそれはとてもここに書けないのでいつか物語の中で昇華しようとは思うけれど。
◆そんな若さが暴走してしまう夏がやってくる前の時代の夏。小学生の頃の夏休みに、小さな思い出がある。小学生の頃は北海道の留萌というところの、そのまた奥にある小平(おびら)という町に祖母が住んでいた(そう、ザンティピーの物語で描いたオ・ヴィラのモデルになったところです)。祖母の家は海まで歩いて五分、海水浴場までは十分ぐらいのところだったので、毎年の夏はそこで何日かを過ごしていた。たぶん、祖母の家の近くに住んでいたんだろうKちゃんという女の子とよく遊んだ。ひとつ上だったはずだ。約束をするわけでもなく、祖母の家に行って海に遊びに行くと必ずといっていいほどKちゃんと顔を合わせて、海で遊んでいた。夕暮れ時になって遊び疲れたら近くの温泉施設にも一緒に行って潮っぽくなった身体をお湯で流した。小学生のことだから男湯か女湯か忘れたけど一緒に入っていたのだ。Kちゃんは妹を連れてきていて、僕も年下の従弟と必ず一緒だったのでお兄さんお姉さんとしてよく話をした。面倒をみなきゃならないめんどくささなんかも、二人で愚痴ったりしたのを覚えている。僕は旭川という北海道第二の都市に住んでいた(北海道の中では)都会の子だったので、いつか旭川のデパートにも行きたいというKちゃんと約束もした。そのときは街で会おうねと。
◆6年生の夏には、Kちゃんに会えなかった。そして僕が中学1年になって仲の良いクラスメイトを連れて海水浴に来たときにも、会えなかった。祖母の家の近所であることは知っていたけど、どこが家かは知らなかった。中学2年、3年の夏は親友たちと別の町へキャンプに行った。だから、Kちゃんに会えたのは小学5年の夏休みが最後だった。
◆もうその顔も姿も朧げでよく思い出せないけど、髪が短くて、リスのようなくりっとした瞳だったことはよく覚えている。

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