SHOJI YUKIYA OFFICIAL SITE sakka-run:booklover’s longdiary since 1996.12.18

Diary

コーヒーと煙草が教えてくれた2017年04月03日

◆晴れ。風もなく穏やかな天気。
◆雪解けもかなり進んでいて、もう日陰や屋根の下などに雪が残っている程度。渡る風もすっかり春らしく柔らかくなっている。ふきのとうもたくさん顔を出している。ようやく北国の春支度も整ってきた。新入学、新入社員の皆さんにとっても、新しい春に新しい生活の始まりだ。
◆そもそもがまともに〈仕事〉をしようなんて考えたこともなかった。振り返ってみると初めて〈仕事〉を意識したのはコーヒーと煙草だったと思う。
◆高校生の頃から喫茶店に入り浸っていた。そこは中学の先輩が働いていた喫茶店で、拙著『ダウンタウン』(河出書房新社)で描いた喫茶〈ぶろっく〉だ。あの物語は半自伝的とも言える物語で、喫茶〈ぶろっく〉は実際に旭川市にあった店で、僕は常連だった。高校生の僕はただ〈ミュージシャンになる〉としか思っていなかった馬鹿な男で、世の中の事なんか何にも知らなかったし、知ろうとも思っていなかった。
◆でも、喫茶店に入り浸るためには当然お金が必要になる。当時の高校生のお小遣いでコーヒー代を払っていてはあっという間になくなってしまう。アルバイトをしなきゃ、何にもできないことに気づいて、バイトを始めた。
◆働いてバイト代を貰ってそして煙草を買って店に行ってコーヒーを注文する。そして、音楽が流れる中でカウンターで美味しいコーヒーを飲んで煙草を吹かして常連の皆と語り合い笑いあう。その時間が何よりも好きだった。学校にいる以外は、自分の家にいるより店にいる時間の方が長かった。
◆自分の好きなことをするためには、その時間を手に入れるためには、働かなきゃならない。コーヒーと煙草で、僕はそれを知った。正直、今もあんまり変わらない。好きな本と、好きな映画と、煙草とコーヒーを手に入れるために、それを楽しめる時間と場所を得るために、稼いでいる。もちろんそれは家族を養うことに繋がっているわけだけど、根本はそこだ。
◆自分と、自分に繋がる人たちと幸せな時間を過ごすために、働く。物語を、書いている。

ページトップへ