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Diary

人生の喜びにも悲しみにもいつもそこには花はある2016年11月12日

◆晴れたり曇ったりの落ち着いた天候。sting57a
◆花屋さんでバイトをしたことがある(まぁもう二十年この日記を書いているのでこの話もたぶん十回ぐらいしてるのだが)。二十二、三の頃だ。自慢ではないが僕はろくでなしではあるけれど仕事をさせれば真面目な働き者でしかも人当たりも良いので「辞めます」と言ったときには社長と専務にマジで引き止められた。正社員になってくれと懇願された。正社員どころか店長をやってくれとまで言われたもんだ(ハイ年寄りの昔自慢はここまで)。その体験は花屋さんを舞台にした『花咲小路二丁目の花乃子さん』などなどで生かされて本当に人間何でもやっておけば後で役に立つもんですよ。
◆とにかく楽しかった。お花を配達して嫌な思いをする人なんかほとんどいない。「配達でーす」と扉を開けて花束なり観葉植物を見せると本当に皆が笑顔になってくれる。毎日他人の笑顔を見られるのならこの仕事も悪くないなと本気で考えたものだ。
◆ただ、花の配達をしていて一回だけとんでもない修羅場に出会したことがある。大きな花束を届けてほしいという注文が来た。注文主は若い女性。添えたカードは〈お誕生日おめでとう〉で、贈る相手は男性の名前だった。小路青年は「恋人同士だろう」と思って配達に向かうとそこは大きな分譲マンションだった。ちょっと不安を覚えてピンポンと鳴らしてドアが開いて出てきたのは、いかにも〈奥さん〉だった。(あ、これはヤバい)と感じたけどどうしようもない。「○○様からご主人に花束です」。その瞬間に〈奥さん〉の表情が変わった。旦那さんを呼ぶ声に棘があった。小さな女の子が出てきて「お花!」と喜んだけど奥さんは子供を引っ張って奥に引っ込んだ。出てきた旦那さんは、何というか、悲壮な顔をしていた。
◆今ならそこにあったドラマを五通りぐらい短編にできるが、いやもうマジでいたたまれなかったっスね。小路青年は(気をつけよう)と心に誓いましたよ。
◆でも、それ以外は本当に楽しいアルバイトだった(まぁ配達の三分の一はお葬式だったんだけど)、人生の喜びにも悲しみにもいつもそこには花はある。若い人たちは、花を贈る、というのをやってみるのも人生を豊かにするアイテムだと思うよ。

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