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Diary

君への手紙2016年10月23日

◆雨が降ったり風が吹いたり寒い一日。kimihenotegami
◆オッケー僕はもう五十過ぎたおっさんで小説家だ。それだけでももう君には僕の言葉なんか届かないかもしれない。つまり僕は今の段階で既にこのくそったれな国で長い人生を生き抜いてきた(ある程度とはいえ)成功者だからだ。つまり、強い人間だからだ。強い人間の言葉なんか聞いたってしょうがないと君は思っているかもしれない。自分の気持ちなんかわかってもらえるはずがないと考えているかもしれない。
◆それでも僕は君に手紙を書く。届かないかもしれない手紙をだ。どうしてかって言うと、簡単な話だ。僕は子供が好きだからだ。変な意味じゃないよ。そんな気はないから安心してくれ。どうして好きかって言うと、僕は今も子供のままだからさ。心が子供のままだから、君たちのことを仲間みたいに思っちゃって、好きなんだ。
◆おかしいだろ? こんなおっさんが、心が子供のままだなんて。笑えるし気持ち悪いよな。
◆でも、そうなんだ。僕の心は今も10歳の頃や、13歳の頃や、17歳の頃や、なんだったらもう子供とは言えない22歳の頃までいつでも戻れるんだ。何を言いたいかわからないって言うんだろ。つまり、今君が押しつぶされそうになっている恐れや苦しみや悩みや悲しみを、消してしまわなくていいってことさ。全部持っていける。持っていったまま生きていけるってことだ。現に僕はそうして今も生きているんだ。それらから逃げるために死ななくていいってことを言いたいんだ。
◆心が強かったんだろうって? 環境に恵まれていたんだろうって? 君にそんなことがどうしてわかるんだい? そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。人の心なんかわからないし、そもそも自分のことだって人間はいろいろわかっていない。誰も何もわからないんだ。わからないまま生きていく。明日僕は死ぬかもしれない。事故や地震や雷や突然死や、いきなりわけもわからず死んでしまう可能性なんかこの世に生きている人に全部ある。
◆あるんだ。この間、僕の友人は突然死んでしまった。この世に神も仏もないもんかって思ったよ。
◆そう、神様は意地悪なんだ。だから、そんな神様に、中指おっ立ててファックユー! って言ってやるために、生きようぜ。そういうのはけっこうイイかもって思わないかい?
◆生きていこうぜ。神様の気紛れで魂を持っていかれちまうそのときまでさ。

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