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Diary

雑誌についてのお話2016年01月23日

◆晴れ。穏やかな天候。kuneru
◆〈ku:nel〉という雑誌がある。日本語表記は〈クウネル〉だ。創刊したのは12、3年前だったと思う。〈ストーリーのあるモノと暮らし〉というキャッチコピーが意図するのは、〈ささやかな暮らしの中にもストーリーがあり、そこで使われているモノや考え方を大事にしていきます〉ということだったと理解している。とにかくアートディレクションが素晴らしかった。どなただったかは失念したけど、広告制作の世界に身を置いた者としてただもう「上手いなぁ。絶妙なセンスだなぁ」と唸りっぱなしだった。たとえば日本の田舎のおばあちゃんの作るまんじゅうを紹介するにしても、写真と取材文とレイアウトが絶妙の〈やさしさ〉だった。一ミリズレても〈ダサい〉か〈クサイ〉になってしまうところを〈誠実なお洒落〉に落とし込んでいた。気になった特集のバックナンバーは今も本棚に置いてある。もしも〈雑誌博物館〉を作ったら間違いなく〈ある時代に輝きを放った雑誌〉として重要な位置に置かれたはずだ。
◆それが、リニューアルした。雑誌は生き物だ。商売だ。流行を作り出すものだ。売り上げが落ちたら廃刊するか衣裳を替えるかどちらかするのがあたりまえだ。その結果、古くからのファンからほぼ100%近い〈静かな怒り〉を表明された。その〈静かな怒り〉を超える程の〈新しいクウネル〉に辿り着けなかったということだろう。元同業者(のようなもの)としては、新しい雑誌のディレクターを無慈悲に責めることはできないが、正直なところ戦略を見誤ったような気がしてならない。
◆出版社も大変な時代を生きている。甘いことなど言ってられない。でも、こういう時代だからこそ無理してでも残していかなきゃならないものを残す。そういう判断ができる企業こそ生き残っていくんじゃないか。という考えこそ甘いというのももちろん承知の上で。
◆僕は若い時代を〈雑誌〉に育ててもらった。今も残る雑誌〈BRUTUS〉は僕の十代後半から二十代前半の時期においてバイブルだったと言ってもいい。ないかもしれないけど、今の僕に少しでも格好良いと思える要素があるなら、それは〈BRUTUS〉から貰ったものだ。
◆そういう雑誌が、どんどん生まれてほしい。生き残ってほしい。ファイトだ。雑誌編集者。

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