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Diary

思い出は、飯の種。2015年11月03日

◆晴れたり曇ったり。今日の穏やかな天候。sogabe
◆霞ががっていたのは、あちこちの畑で少し焼いていたのかもしれない。最近でこそ少なくなったけど昔はこの時期に相当派手に畑を焼いていたものだ。と、いかにも昔から田圃や畑に囲まれて暮らしていたように書いているけど僕は製紙工場の敷地のど真ん中で育った子供だ。工場の機械の唸りの音と煙突からの煙と川に流す廃液の匂いの中で遊んでいた。なので田圃や畑や海や山の記憶は、夏休みに遊びに行っていた(これは本当に絵に描いたような田舎)母方の祖父母の家のものだ。
◆『スタンド・バイ・ミー』という名作映画にとてつもなく郷愁を覚えるのは、あの映画のように僕たちも線路の上を歩いて遠出した記憶があるからだ。祖父母の田舎の鉄道は本当に何もない景色の中をどこまでも続いていた。線路に耳を当てて列車が来てないかどうかを確認して、「来た!」となったら脇へどけてその貨物列車などを見送っていた。
◆実家のすぐ近くにも小さな鉄道駅があった。その鉄道駅で僕たちはよく遊んでいた。改札口の鉄枠にぶら下がって鉄棒代わりにしても、駅員さんたちは怒らなかった。雨が降ってきて長く広いひさしの下でキャッチボールをしていたら、駅員さんが「よーし」と帽子をくるんと回してキャッチャーをやってくれたこともある。1960年代の話。まだ十二分にのどかな時代だったんだろう。
◆名前を出しても怒られないと思うがその駅は〈新旭川駅〉だ。画像検索してもらうとわかるが、驚いたことにその駅は僕の子供の頃の、ほぼそのままの佇まいでまだ現存している(ようだ。未確認です)。歴史的に保存してもらいたいぐらいだ。
◆思い出は、作家を職業にした今の僕にとってはまさに生きる糧になっている。いやカッコつけてしまった。こんな風に言うと身も蓋もないが、まぁ飯の種ってやつだね。
◆写真は曽我部恵一のアルバム〈My Friend Keiichi〉。

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