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Diary

『ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン』文庫です2020年04月10日

◆曇り。平年以下の気温で寒い一日。
◆すっかり新刊が出るとき以外は日記を更新しなくなってしまった。更新したい気持ちはあるのだが、筆が進まない。原稿を書く以外のエネルギーが減ってしまっている感じだ。ひょっとしたら何か新しいことを始める時期に来ているのかもしれないなぁ。あれこれ考えているんだけど。
◆そして今月の17日頃に発売予定の文庫新刊『ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン』(集英社文庫)の見本が届きました。シリーズとしては13作目ですね。いつも通りに〈東京バンドワゴンシリーズ〉のサイトにも書いていますが、いつかは使おうと思っていた名曲〈ヘイ・ジュード〉をここで使いました。この曲はビートルズ関連の本では、離婚したジョン・レノンの息子であるジュリアン・レノンにメンバーが「落ち込むな、良い事もあるさ」と歌ったものだということが書かれています。これを僕は父親から息子へ送る歌と解釈して、今回は〈父から息子〉というものを意識して、全体の構想を練りました。
◆そもそも堀田家には強烈な個性を持った父親がいます。勘一もそうですし、我南人もそうです。地味な紺だって実は小説家という個性的な仕事を持った父親です。青なんか見た目からして派手な父親です。そうして、それぞれが息子なんです。勘一にしても草平の息子ですし、我南人も勘一の息子。息子の最大のライバルは父親というのはよく言われることですが、父親にとってもいちばん身近なある意味でもライバルは息子なわけです。人生を送る中で様々な形で訪れる、父と息子の関係性や感情を、堀田家とその周辺の人たちの中で描いてみたつもりです。
◆今回は、父と息子の別れの場面がいろいろと重なる時期になりました。作者でありながらそう言うのはなんですが、本当に偶然に重なっていくんですよね。もちろん、僕が考えている物語ではあるんですが、実質15年も続いているシリーズになると、こんなところでこれが繋がってしまったのか、と作者でさえびっくりする展開になることが本当によくあります。登場人物たちの人生が、本当に物語の中で生きているんですよね。『ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン』もそういうことを実感する一冊になりました。いつものように、楽しく賑やかな堀田家の一年の日々を愉しんでいただけたら嬉しいです。
◆今、まさに世界中が新型コロナウィルスの渦に飲み込まれています。本当に世界中が国家存亡の危機にまで追い込まれている状態です。私たちは、病気と闘う医療の世界の方々に全てを託して、自分たちができること〈感染を広めない〉ということだけを考えて息を潜めて生きていくしかありません。国の経済が本当に壊滅状態にまで追い込まれるかもしれません。感染が止まることを、ワクチンが開発されることを、ただそれだけを祈り、自分たちが生きていくために耐える時が続くでしょう。
◆小説家は物語を書くことしかできません。不安に押しつぶされそうな日々の中、堀田家の物語が皆さんを少しでも楽しませてくれれば、明日への光になってくれればと願います。

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