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Diary

文庫新刊『隠れの子 東京バンドワゴン零』が出ます。2021年07月10日

◆やや雲が多めの日。しばらくの間は湿度高目の日が続くとか。それは勘弁していただきたいのだがしょうがない。
◆今月中旬に発売予定の文庫新刊見本が届きました。『隠れの子 東京バンドワゴン零』(集英社文庫)です。文庫オリジナルですので単行本はありません。
◆初めての〈江戸時代劇〉です。まぁ時代小説と言ってしまうのは何か恐れ多い気がするのですが、江戸時代ものですね。
◆そもそもは以前の文庫担当編集さんから「小路さん時代劇好きでしょ? 文庫オリジナルで江戸もの書きませんか?」と言われて「よっしゃ書きますか!」と言ったのですがいっこうに書けずに幾星霜過ぎまして、集英社の皆さんと集まって会食をしている席で〈小説すばる〉の編集さんが「小路さんそれならうちで連載にしません? 連載にしたら締切りあるから書くでしょ?」となりまして、〈小説すばる〉に『隠れの子』というタイトルで連載したものです。
◆時代的にはいわゆる化政文化の頃。化政文化とは江戸時代後期の文化文政時代(1804年~1830年)を最盛期として、江戸を中心として発展した町人文化のことです。この時代を主な背景としています。まぁ概ね1830年頃、徳川家斉が将軍の頃と思っていただければいいです。物語の語り手は四人。三河島で植木屋を営む神楽鉄斎のところに住む〈るう〉という少女。そして神田佐久間町で秣商を営む〈遠州屋佐吉〉、牢屋同心の〈日下安左衛門〉、そして北町奉行定廻り同心〈堀田州次郎〉です。写真の表紙になっているのが〈るう〉と〈堀田州次郎〉です。この二人が一応主人公になります。私の本を読んでいただいている方と、タイトルにも〈東京バンドワゴン零〉とありますからもうおわかりですね。この〈堀田州次郎〉と〈るう〉こそが、後の〈東京バンドワゴン〉を開く〈堀田家〉のご先祖様、という設定です。そう書くと「おや堀田家の先祖は確か江戸の頃は町人とか書いてなかったか?」という記憶力の優れた方もいるでしょうか。その辺は、ひょっとしたらこの先でまた続きを書くことになるやもしれませんので、後のお楽しみということにしておきましょう。
◆そして、もちろんご先祖様の話ですから、現代の〈東京バンドワゴンシリーズ〉に関わるものは一切出てきませんので、シリーズを読んでいなくても大丈夫です。
◆物語は、三河島の植木屋〈神楽屋〉で働く〈るう〉(おるう、と呼ばれています)が、〈隠れあそび〉がまた出ているかもしれないからその始末を頼むよと主である鉄斎から言われるところから始まります。おるうが向かう先は神田佐久間町にある煙草屋の〈菅季屋〉。そこの一人息子がどうも〈隠れあそび〉をしているらしいとのこと。おるうはその子を助けるために一人〈菅季屋〉へ向かうのですが……。〈隠れ〉と呼ぶ、ある力を持つ者たち、その力を闇に落とした者たち。〈堀田州次郎〉は同心として自分の継父を殺したやもしれぬ者たち、そして江戸の闇を生きる者たちを〈遠州屋佐吉〉〈日下安左衛門〉、そして〈おるう〉の力を借りて追って行くことになります。
◆正直書いてしまうとタイトルは連載時は『隠れの子』でした。発売に際して営業さんの方から「堀田家のご先祖様という設定があるならタイトルに東京バンドワゴン付けられませんか? その方がウリになるんで……」となりまして(^_^;)、まぁぶっちゃけそうだよなぁ、と思い切って〈東京バンドワゴン零〉とサブタイトルを付けました。もしも売れたら続きを書けますし、なんだったらこの後の江戸・明治・大正と続く〈堀田家ご先祖様〉シリーズとしても書けるかもしれません(昭和は通常のシリーズ番外編でイケますからね)。どうかよろしくお願いします。
◆初めての時代小説は、いやぁやっぱり大変でした(^_^;)。どこまで江戸時代の味を出せたかはわかりませんが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

単行本新刊『明日は結婚式』が出ます。2021年07月03日

◆何日か湿度が高めの日が続く北海道我が家近辺。それでもずっと窓を開けていられる気温が続いて、今季初の蚊取り線香も焚いた。そんな日に届いたのは、今月中旬に発売予定の単行本新刊『明日は結婚式』(祥伝社)です。
◆もう還暦になった年寄りなのでいろんなことを忘れがちです。確か、この物語を書くことになったのは、担当編集が変わって新しい編集ガールさんに、次はどんな物語を書きましょうか、と打ち合わせしたときに、「テレビドラマにもなった『娘の結婚』(祥伝社)のような、結婚にまつわるお話はどうでしょうか!」と勢い込んで言われて「あ、じゃあそうしますか」といつもように軽く答えたのでした(大体僕の最初の打ち合わせはそんな感じです)。
◆さて、じゃあどんな結婚の物語にしようかと考えたときに、すぐに頭に浮かんできたのは〈結婚前夜〉という言葉でした。それがフックになって、すぐに登場人物たちの姿が浮かび上がってきました。まさしく結婚前夜の新婦側の家族、そして新郎側の家族。明日には親類関係となるその二つの家族のそれぞれの〈結婚式の前の夜〉を描いていけば、それはしっかりとした物語になるのではないか、と。
◆結婚経験のある皆さん、〈結婚式の前の夜〉はどんなふうに家族と過ごしましたか? 書き始める前に自分のことを思い出そうとしたのですが、なにひとつまったく浮かんできませんでした(^_^;)。それもそのはずで、僕の場合は結婚前に既に二人で暮らしていたので、家族とは過ごしていなかったのですよね。そして故郷には住んでいなかったので、むしろ父母たちが時間通りに札幌に来られるかなどという心配などしていました。
◆物語で結婚するのは、実家がパン屋さんを営んではいますが、本人は本の装幀デザインをしているデザイナーの新郎。そして実家はごく普通の会社員の家庭で、本人は信用金庫に勤める新婦です。新郎の職業こそ多少特殊ではありますが、ごくごく普通の一家に生まれた普通の二人です。それでも、家族たちにはそれぞれ人生のあり、それぞれの出会いと別れがあり、家族を築いてきました。大事な息子や、最愛の娘が結婚する前の夜。祖母や、祖父や、父や、母や、妹や、弟たちが、どんなふうに思い、どんなことを考えて結婚式に向かったのか。楽しんでいただけたら嬉しいです。

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