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Diary

HEARTBEATを感じながら2016年07月15日

◆晴れ。気持ちの良い天候。heartbeat
◆昼間は28度ぐらいにまでなるけれども、陽が落ちるとすっかり涼しくなってしまって窓を閉めてしまう。金鳥の蚊取り線香もまだ出番には早い感じだ。北海道の夏はまだ始まったばかり。
◆物語を書き始める前に、その物語のサントラ盤を作るという話は何度もしている。テーマソングを決めて、それから作品世界に合う曲をiTunesから10曲ぐらい選んでリストにする。そして、それを流しっぱなしにして物語を書いていく。そのスタイルが自分の中で確立したのは五作目の『HEARTBEAT』(東京創元社)からだ。もう11年前の物語。テーマソングはもちろん佐野元春さんの〈ハートビート(小さなカサノバと街のナイチンゲールのバラッド)〉だ。今確かめると198回この曲を流している。『HEARTBEAT』という物語を書き上げるために、190回ばかり聴いていたわけだ。
◆思い出せば必死で書いていた。何せデビューしたはいいがまったく売れなかった。このままだと執筆依頼も来なくなってそのまま消えていってしまうという切実な焦りがあった。デビュー前にあんなに苦労してようやく日の目を見たと思ったのに、そのまま浮上できずに終わってしまうのかと毎日のように考えていた。眠れない夜も過ごした。そういう中で、書いていた。書き続ける力を与えてくれたのは自ら選んだ作品のテーマソングだった。その曲を流せば、落ち込んだ気持ちも売れない苦しさも生活の辛さも全部忘れて、その物語の中に入っていくことができた。
◆〈ハートビート〉という言葉の意味は、直訳だと心臓の鼓動だろうけど、歌詞では〈この胸のときめき〉になる場合が多い。ラブソングだ。僕のこの胸のときめきが聴こえないかい? 聴いておくれ、と歌う。
◆それを忘れてしまうと、駄目だ。胸のときめきを感じないで、物語を紡いでいけるはずがない。年数だけ経って書く技術を得てそれで物語を編むことができるようにはなっているけれど。それじゃ、駄目だ。
◆もう一度HEARTBEATを感じながら、書く。

エンターテイナー。ザ・ピーナッツと永六輔さん。2016年07月11日

◆晴れだけど、少し風が冷たかったかな。peanuts
◆ザ・ピーナッツの妹さん伊藤ユミさんの訃報と、永六輔さんの訃報を同時に聞いた日になってしまった。この一組とお一人の全盛期の活躍を見聞きして育ったのは、ひょっとしたら僕らの年代が一番下ぐらいになるのだろうか。
◆ザ・ピーナッツといえば伝説の番組となっている〈シャボン玉ホリデー〉だ。当時の僕はまだ物心つかない頃から小学生。美人姉妹は歌もダンスも上手でそしてクレイジーキャッツとのコントも上手だった。つまり、当時の僕にとっては〈初めて目にして親しんだ女性エンターテイナー〉だったのだ。怪獣映画である〈モスラ〉の双子も印象深い。その後、中学生になり音楽に夢中になったときに初めて気づいた。彼女たちが優れた〈歌手〉であり、何気なく聴いていた彼女たちの歌は上質のアメリカンポップスでありジャズのスタンダードナンバーであり、本家に比しても決して劣るものではなかったことに。つまり、生まれてからずっと僕はザ・ピーナッツによって〈上質の音楽〉に触れさせてもらっていたのだ。残された彼女たちのDVDを観ると、その凄さに改めて唸ってしまうほどだ。彼女たちがテレビに顔を出さなくなってからの〈芸能界〉にはザ・ピーナッツを超えるエンターテイナーは生まれていないように思える。
◆そして永六輔さんは才人だ。ザ・ピーナッツが活躍していた頃の放送業界を渡り歩いた人でもあり、そういう意味では僕らの世代が幼い頃に、日本のエンターテインメントを作り上げた人の一人だ。何よりも、後世に残り続ける永遠の名曲『上を向いて歩こう』の作詞者だ。その歌が発売されたのも僕が生まれた頃だ。僕の55年間の人生でずっと『上を向いて歩こう』が日本には流れ続けている。僕のデビュー作のタイトルは『空を見上げる古い歌を口ずさむ』だ。その古い歌とは『上を向いて歩こう』だ。自分が小学生の頃を描いた物語だけど、その時期、子供も大人も皆が口ずさんでいたのは間違いなく『上を向いて歩こう』だったからだ。
◆昔は良かったというつもりはない。良いものは残り続けるが、時の流れに消えていくものの中にも決して忘れてはいけないものもある。あの頃、日本のエンターテインメント業界は間違いなく〈世界〉を見据えて追いつき追い越そうとしていた。その時代があるからこそ、今がある。
◆心から、ご冥福を祈ります。ありがとうございました。

まぁ、寝るところはあるから心配するなパディントン2016年07月08日

◆晴れ。少し風があったけど爽やかな一日。padinton
◆子育ての終わり、というのをどこで意識するかはまぁ人それぞれだろうけど、概ね高校を卒業したら一区切りではないだろうか。大学も確かに金はかかるし何かと問題を起こすかもしれないけれども、二十歳越えれば法的にも大人だ。そんなに構ってられないよと思うのではないだろうか。我が家も二人の息子がいるが、次男も二十歳になった。大学生ではあるものの一人暮らしをしていて、妻と二人きりの生活も二年以上が過ぎている
◆写真の映画『パディントン』。まだ観ていないのだけど、〈パディントン〉の絵本は我が家にも数冊ある。二人の息子が小さいときによく読み聞かせた絵本だ。うちの息子たちはとても扱いやすい子供で、「寝るよー」と布団に入って絵本を読んだりお話をしているうちにすぐに寝息を立ててくれた。思えば楽で非常に親孝行な息子たちだった。そもそも僕は作家なので口からでまかせで〈お話〉をするのも得意だった。
◆ただまぁ、そんなふうに毎晩読み聞かせていた絵本もお話も息子たちは覚えてはいないだろう。ひょっとしたら何かが記憶にあるかもしれないが、そういうものを懐かしく思い出すにはあと十年二十年、年を取らないとならないだろう。
◆親が子供たちに残せるものは何だろうと考えても結論は出ない。そもそも親だって大した人間じゃない。子供たちがいてくれたお蔭で親も人間として成長するものだ。大きな金を残したところでろくなことにならないのはいろんな過去の出来事や歴史が証明しているしそもそも残せるあてもない。
◆親は、毎日を一生懸命生きるしかない。真面目にきちんと毎日を過ごせと自ら実践するしかない。その背中を見てもらうしかない。何かを残そうなんて考えるのもおこがましいかもしれない。
◆まぁとりあえず、家はある。二人の息子の人生に何があろうと、ここに帰ってくればゆっくり寝られて朝は来る。そう思っていれば、それがあれば、頑張れるだろう。忘れるなよ、と、父は思う。帰ってくる家はあるぞ、と。

『小説家の姉と』が出ます。2016年07月03日

◆晴れたり曇ったり。概ね良い天気。shosetsukanoaneto
◆日曜日の朝が特別だったのははるかに昔で、ずっと家にいる小説家としては曜日の区別はJリーグの試合があるのが週末という基準ヽ( ´ー`)ノ。今日届いたのは7月の単行本新刊『小説家の姉と』(宝島社)の見本です。先月出た単行本新刊『ストレンジャー・イン・パラダイス』の中央公論新社さんもそうでしたが、この宝島社さんも初めてお付き合いする出版社さん。今年はそういうのが多いですね。まだお付き合いのない出版社さん、お話お待ちしております(^_^;)。
◆この本は、担当編集さんから「小路さんの〈姉と弟〉の物語が読みたいのです」というリクエストがありまして、ではそうしましょうと、主人公は弟と姉です。そもそも僕は二人の姉がいる〈弟〉という立場の人間なので今までの作品にも数多く姉弟が出てきたと思いますが、それをより濃く打ち出した物語にしようか、と、書き始めました。
◆タイトル通りそのまんまの物語で〈小説家になってしまった姉と大学生の弟〉のお話です。大きな謎も出来事も様々な問題も何もありません。帯に概要が書いてありますが、それがすべての、本当に驚くぐらいに、自分で言うのも何ですが静かで起伏の無い物語です。
◆小説家になった姉の日常なども描かれていますが、これは自分のことと幾人かの知人の女性作家さんから聞いてる話を合わせたものです。皆が皆そうだとは限らないですからね。あ、特にモデルにした女性作家さんがいるわけではないです。それは言っておかないと後で何を言われいやなんでもないですヽ( ´ー`)ノ。さらに舞台は東京で、姉が小説家でデビューした出版社は架空のものなんですが、編集者や同業者が読むと「うん、あそこね」とわかってしまう住所やシチュエーションが描かれていますが、まぁ設定上便利だったので使わさせてもらっただけで何ら他意はありませんのでS社さんご勘弁をヽ( ´ー`)ノ
◆兄弟姉妹がいる人は納得できると思いますが、姉気質とか弟気質みたいなものはあると思います。それからすると僕は完全に〈姉しかいない弟気質〉な男です。そういうのも含めて、普通の生活に舞い込んできた〈小説家の姉〉という少し特別なものにちょっとばかり振り回される弟の物語です。のんびりと軽く愉しんでいただければ嬉しいです。

夏のゲートと『ベルセルク』連載頑張ってください2016年06月30日

◆晴れ。夏のゲートが開いたような暑い一日。sherockhanayone
◆昨日よりは風が強く、家の中は多少は涼しかった。ようやく北海道にも夏の匂いが漂ってきたわけで、これからの短い夏の季節をじっくり楽しみたいと思う。
◆夏の愉しみといえば、個人的には〈金鳥〉の蚊取り線香だ。それを蚊遣り豚に入れて焚くのだ。これこそ夏の香り。で、毎年言ってるけど金鳥さんの回し者ではないんだけど絶対に〈金鳥〉でなくてはならない。それ以外のメーカーだとただのお線香を炊いているような気になってしまうのだ。もうひとつは、座敷での昼寝だ。これこそ自由業者の特権だろう。暑い日に風の通り抜ける座敷で十五分ほどお昼寝するのだ。お腹が冷える体質なのでタオルケットはお腹に掛けるけどね。
◆あまり良くない傾向だなぁ、と自分では考えているんだけど、最近とみに物語の先読みをしてしまう。小説でも映画でも漫画でもドラマでも読みながら観ながら「これでほぼキャラも条件も出揃ったろう。するとラストはこう落とすか」と、考えてしまってもう結末を確かめたくなってしまうのだ。自慢ではなく一応小説家なんだからその読みは当たる。ほぼ100%当たる。当たらずとも道筋は読めるので「あぁそっちに行ったか」と思う。なんかもう純粋に楽しめないなぁと思ってしまう。いや楽しいんだけどさ。
◆それでも、先読みできない作品は存在する。写真のBBCの『シャーロック』シリーズもそうだ。これは本当に楽しみにしている。それと、マンガなら長期連載になっている『ベルセルク』だろうか。こちらはもう二十年以上連載しているがまだまだ終わりが見えないしどう展開させるのかも読めない。作者である三浦健太郎さんも、体調不良もあり「死ぬまでに完結できるだろうか」と周囲に漏らしているそうだ。いや読者である私たちもできれば自分が死ぬ前に最終回を読みたいと思っている。何せあと二十年かかるとしたら75歳になってしまう。せめてあと十年ぐらいで完結させてくださいと願う。
◆ひとつの物語を十年二十年三十年描き続けるというのは本当に凄いことだ。ましてや漫画ならば体力の消耗度は小説の比じゃないだろう。モチベーションを保つのも本当に大変だ。一年に一冊の、小説である〈東京バンドワゴン〉でさえ、気持ちをそこにアジャストさせるのに苦労することがある。
◆それでも書き続ける、描き続けるのは、やはり楽しいからだと思う。苦しくてしょうがないけど、楽しくてしょうがない。案外小説家も漫画家もマゾっ気が多いのかもしれないなヽ( ´ー`)ノ

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