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Diary

『スローバラード』発売になります2016年09月04日

◆晴れたり曇ったり。slowballad
◆どうやら残暑は終ったみたいだ。窓を開け放っていると少し涼しくて、夏物のシャツの下にTシャツを着ようと思わせるぐらい。そんな日にまもなく発売の単行本新刊『スローバラード』(実業之日本社)の見本が届きました。
◆〈ダイ・シリーズ〉の4作目になります。順番に『モーニング』『コーヒーブルース』『ビタースイートワルツ』(実業之日本社文庫)と来て、この『スローバラード』です。このうち1作目『モーニング』はまったくシリーズにするつもりもなく、弓島大(ダイ)と、大学時代に同じ家に住んだ仲間、淳平、ヒトシ、ワリョウ、真吾の五人の、大学生時代の出来事が、四十半ばになったダイの語り口で語られていきます。そして、シリーズになってしまった2作目『コーヒーブルース』からは、舞台がダイが営む喫茶店〈弓島珈琲〉になります。この店はダイたち五人が暮らしていた家を改装したものという設定です。そこに下宿する三栖刑事と喫茶店の常連たちが主役であり、大学時代の仲間、淳平、ヒトシ、ワリョウはほぼ登場しない作品を彩る脇役でした(真吾は1作目で故人になっています)。
◆そしてこの『スローバラード』です。時系列がようやく現在に追いつき、シリーズに一区切りをつける作品として、1作目の仲間たち、淳平、ヒトシ、ワリョウがメインで登場してきます。もちろん、〈弓島珈琲〉の常連たちと今やダイの相棒ともいえる三栖刑事も出ます。物語の重要な出来事として、1作目に語られた出来事が出てきますので、できれば1作目の『モーニング』を読んでからの方が、より物語を楽しめます(もちろん、読んでいなくてもわかるようにはなっていますが)。どうぞ、よろしくお願いします。
◆一区切りはつきますが、シリーズ終了というわけではありません。次からは、新たなダイのストーリー展開になると思いますが、今回の表紙の装画がその新たな展開を物語っているかもしれません。
◆実はこのシリーズ。ひょっとしたらお気づきの方がいるかもしれませんが、名作ドラマであり僕の人生にも大きな影響を与えたテレビドラマ『俺たちの旅』の制作パターンをなぞってみました。この『俺たちの旅』は主人公たちの大学時代を描いた本編終了の後に、三十代になった〈十年目の再会〉、四十代になった〈二十年目の選択〉、そして五十代になった〈三十年目の運命〉とリアルタイムでスペシャルドラマが制作されました。この〈ダイ・シリーズ〉も『モーニング』が大学時代、『コーヒーブルース』が三十代のダイ、『ビタースイートワルツ』が四十代、そしてこの『スローバラード』が五十代のダイたちを描いているのです(あ、テレビドラマの内容をなぞっているというわけではないですからね。あくまでもその年代を追っていくパターンだけってことです)。ま、作者の個人的な趣味と満足のためですね(^_^;)。
◆ひとまず、ダイたちの〈青春〉に一区切りをつけられて、作者としては満足しています。楽しんでいただけたら嬉しいです。

実家へ2016年09月03日

◆晴れ。暑い日。ciderhouse
◆9月に入っても残暑が続いている北海道。夏が続くのは構わないのだけどそろそろ金鳥の蚊取り線香が切れそうなので、もうそろそろいいかな(^_^;)。
◆いろいろと事情があって実家へ行くことが増えている。高速道路を使えば飛ばして一時間半で着く距離だけど、この年になると往復250キロを日帰りすると非常に疲れる。若い頃は全然平気だったのになぁ。
◆自分が子供として過ごした家族はいつかバラバラになる。僕は末っ子だったので、実家を出た37年ほど前に僕の家族は全員バラバラになって新しい人生をそれぞれに歩み始めたことになる。実家も建てられてから40年以上が過ぎて、あちこちにガタが来ている。床は歪んでいるところがあるし、閉まりが悪い襖もあったりする。隙間風も入ってくるし雨漏りがしたこともあった。
◆その実家も、もう建て替えられることはたぶん、ない。そして誰かがそこに住むこともおそらく、ない。
◆若い頃、自分の家は平凡だと思っていた。ほとんど何も波風のないつまらない家族だと。それが、家を出てから、つまり僕が大人と呼ばれる年齢になってから自分が知らなかった事実をいろいろと聞かされた。そんなことがあったのかと、文字通り目を丸くして驚いたこともある。子供たちは知らなくていいことだと、親が隠していた自分たちの人生の陰の部分。ありきたりの言葉に過ぎるけれども、光があればそこに陰もできる。それが、あたりまえだ。
◆どんなに平凡な人生だろうと、どんなに波乱含みの毎日でも、その人が送ってきた人生のあたりまえの日常を最後まで覚えているのは、家族だけだ。
◆それを忘れないように、自分の人生の日々を生きていく。

Mちゃん2016年08月29日

◆晴れ。暑かった。mahoroba
◆ここ何日かは夕方になると急に気温が下がり寒くて窓を閉めて寝ていた。「あぁもう秋に入っていくんだな」と思っていたのに今日の狂暴な陽射しだ。そしてこんな夜中の11時になってもまだ窓を開けているぐらいに暑さが家の中にこもっている。残暑にも程があるってもんだ。
◆あの頃の僕は若すぎて、と、歌う古いフォークソングがあるが、ときどき自分の若い頃を思い出して恥ずかしくなったりよくそんなことができたな、と思うことがある。特に僕には二人の息子がいて、二人とも二十代だ。つまり自分の通ってきた道を今まさに彼らは彼らの人生として歩んでいることになる。比べることは無意味だけれど、息子の話を聞いてこの頃の俺はどうだったかなぁ、なんて考える。親としては「お前それはないだろう」なんて思って言いたくなるときもあるが、よく考えたら自分はもっととんでもないことをしていたりする。難しい。特に僕は本当にろくでなしだったので親らしくアドバイスなどできやしない。どの口でそれを言うか、なんてことになってしまう(^_^;)。
◆振返れば、申し訳ないことをしてしまったなぁと思い、謝りたい人はたくさんいる。今でもたまに思い出すのはMちゃんだ。男性だ。僕よりも二つ上だったはず。一人暮らしをしていた頃の馴染みの飲み屋の常連仲間で、Mちゃんは中学を出てすぐに働いていた。予備校生だった僕のことを随分気に掛けてくれて、仕事の休みの日などは僕のために昼ご飯を作って持ってきてくれたりした。勉強の邪魔しちゃ悪いからといつもさっさと帰ろうとするMちゃんを引き止めて、あれこれ話をした。Mちゃんは僕の部屋にあるたくさんの本やレコードに感心して、特に本を読みたがったのでよく貸してあげた。自分は学がないから簡単なやさしい小説を教えてくれと言って、読み終わると「これはどういうことだったんだ?」と僕によく訊いてきた。教えてあげると真剣な顔で聞き入って、理解できると嬉しそうに笑っていた。
◆Mちゃんは、きっと勉強がしたかったんだと思う。でも働かなきゃならなくて。そして勉強していればいい僕の環境がきっと少し羨ましくて。
◆Mちゃんは僕の持っていたシャープペンを随分気に入っていた。同じのが二本あったので一本あげると、すごく喜んでいた。これで読んだ本の感想文でも書くかな、と少し恥ずかしそうに言った。読むから持っておいでよと言うと、嬉しそうに頷いていた。
◆僕は急に引っ越しを決めてしまったので、Mちゃんにちゃんとした別れを言えなかった。飲み屋に来ればいつでも会えるんだからと思っていた。でも、いざ引っ越すとその店から足が遠のいてしまって、結局そのまま一度も会えず仕舞いになってしまった。まだ部屋に電話もない若者も多かった頃だ。簡単に連絡をつけられる時代じゃなかった。
◆Mちゃんにあげたシャープペンと同じシャープペンは、もう何十年も使っていないけどまだ手元にはある。Mちゃんは、あれからどんな人生を送っているだろうか。

直木賞パーティ2016年08月26日

◆東京は晴れ。51likodxXsL
◆あまりの暑さに溶けるかと思ったぐらい東京は暑い。いやマジで暑い。外なんか歩きたくない。なので夏の東京にはなるべく来ないようにしているんだけど、先輩作家の荻原浩さんの直木賞受賞パーティにお招きいただいたので一泊で東京入り。
◆パーティでは荻原さんに挨拶したのはもちろん、メフィスト賞仲間の辻村深月さんに数年ぶりで会えました。辻村さんとは年に一回ぐらい「ゆっくり話したいねー」とメールし合うのだけどなかなか機会がない。あとは大崎梢さんにも会いましたね。数人の担当編集さんとも会って、なんだかんだとその場でお仕事の話。
◆荻原浩さんは、僕がデビューしたての頃にお会いできて、それからパーティで会う度にあれこれとお話してもらってきた大好きな先輩。同じ元広告業界ということでその辺の話もできるし、子供を持つ親としての話とかもします。もちろん、僕は作家としてデビューする前から荻原さんの小説のファンでずっと読んでいました。ようやく、本当にようやく直木賞受賞で、本当に良かったなと。
◆ま、あれこれあれこれ、ここには書けない話も、作家同士、そして編集者とはいろいろします。近頃は忙しいし北海道から出るのはめんどくさいしで(^_^;)、受賞パーティに行くことも減っているのですが、こうして会場に来ることで気持ちを新たにすることもできます。つまりは、書いて書いて書きまくるしかないのだと。
◆また台風が来るとか。ちょうど合間を狙って来たみたいで良かった。皆さん、充分気をつけて夏の終りをお過ごしください。明日北海道に帰ります。

北海道が大変だ2016年08月20日

◆雨。myprivate
◆大雨警報に洪水警報。北海道は今台風の余波で大変だ。浸水している地域もあるし川の氾濫もある。しかも明日明後日にはまたもうひとつ台風が来るという。今現在我が家近辺は警報が出ているだけで特に問題はないが、かつて大規模な水害にあった地域でもあるので心の準備だけはしている。
◆そもそも北海道は台風に対しての心構えや備えがほとんどまるでない。何故かと言うと、来ないからだ。いつも途中で温帯低気圧になってちょっと雨風強いわね、で終わってしまう。50数年の人生で本当に来たのはたぶん二回ぐらいだ。なので、昔から映画やテレビで観る〈台風が来るから雨戸を〉とか〈窓に板を〉とかそういうことを一切したことがない。そもそも雨戸がある家もほとんどない(かなり昔はあることはあったけど)。冬の猛吹雪や積雪に対しては備えも知識も経験も万全だが台風に関してはまったくのド素人なのだ。
◆そんな中で甲子園、南北海道代表の北海高校があれよあれよという間に決勝戦に進んでしまった。しかも札幌ドームでは北海道日本ハムとソフトバンクの天王山の真っ最中だ。さらにはまだオリンピックの熱戦も続いている。どのチャンネルを見てもサイドに〈災害情報〉が常に流れてくるので今北海道の人は本当に大変なのだ。気忙しいったらありゃしない。
◆もちろん原稿も書かなければならない。あぁ本当に忙しくて困っている。今年の夏は本当に大変だが実はもう北海道の夏は終っている。こちらではお盆過ぎたらもう夏は終りなのだ。
◆オリンピックが開かれる度にメダルの云々であれこれと騒がしい。どうして毎度毎度同じようなことで騒ぐのか。オリンピックは平和の祭典だ。でも同時に勝者と敗者の出るスポーツ競技の大舞台だ。出る以上は勝つために戦うのはあたりまえ。日の丸と一緒に何を背負うかは選手一人一人の生き方だ。観る私たちは全てを受け入れ勝者にも敗者にも四年に一度の賞賛を。

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