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Diary

メリークリスマスをあなたに2016年12月24日

◆メリークリスマス。

(ずっとクリスマスも年末もなくただひたすら書き続けているので更新できないけどせめてこの言葉だけでも)

◆僕はクリスマスが大好きです。どんなに世界を哀しみや苦しみが覆っても、この日だけはせめてこの時だけは、世界中の人たちがその言葉でほんの少し優しくできる、ほんの少し優しくなれる。そんな気がして。

◆メリークリスマス。あなたに幸せが訪れますように。

◆(できれば私が無事にあの原稿を年内に書き上げられますように祈ってくださいヽ( ´ー`)ノ)

クリスマスにはクリスティとスティングを2016年12月13日

◆気温がプラスになった日。
◆大雪で交通網がマヒして北海道だけではなく全国に影響してしまったここ何日かなんだけど、今日は打って変わってプラスの気温。雪が融ける融ける。まるで春が来たかのように。まぁ冬の北海道はこういうもんだよ。自然には人間は決して勝てないのだ。畏れをなしてただ通り過ぎるのを待つ。そういうもんだよ。
◆〈クリスマスにはクリスティを〉というのは、その昔にイギリスの出版社が仕掛けた宣伝コピーだったそうだ(細かいことは忘れちゃったけどたぶんそう)。クリスティというのはもちろんミステリーの女王アガサ・クリスティのこと。それを知った一人暮らしを始めた頃の小路青年は「なるほど」と思い、クリスマスの日には一人部屋に篭ってアガサ・クリスティを読んだものだ。名探偵ポアロはもちろんだけど、僕のお気に入りは短編にしか出てこない愛の探偵ハーリ・クィンものが好きだった。ハーリ・クィンについてはそのキャラクタを詳しく説明するとネタバレになり兼ねないのでしないけど、普通の探偵じゃない。興味の湧いた方はぜひ。
◆ところが一人暮らしを始めた頃、何故か某チャンネルで映画『スティング』をクリスマスの日に放映していた。確か、三年か四年連続で『スティング』をやっていたのだ。どういうわけかはわからないけど、小路青年にとっては永遠の名作なのでもちろんそれも部屋で一人で観ることにしていた。つまり、19歳からしばらくの間、僕のクリスマスは〈クリスティとスティング〉だったのだ。
◆なお、念のために申し添えると当時の僕はモテたので彼女がいなかったわけではない。彼女がいるのにあえてそうしていたのだ。ま、若かったからね。それがカッコいいとか思っていたんだよね。当時の彼女の皆さん申し訳なかったですヽ( ´ー`)ノ
◆で、何で今日クリスマスの話題にしたかというと、修羅場になっているのでもうしばらくの間はここを更新できそうにもないからです。毎年訪れるこの修羅場を無事に乗り切れることを祈っていただければ幸いです。
◆では皆様、良いクリスマスを。

ジョン・レノンが殺された冬の頃の僕は2016年12月08日

◆晴れたり曇ったり。
◆ジョン・レノンが死んだ日。僕は19歳だった。浪人中で、一人暮らしを始めて迎えた最初の冬の日。その頃の僕はまだミュージシャンへの夢を捨て切れずに、アルバイトしたりたまに予備校に行ったりライブハウスで歌ったりしていた。住んでいたアパートは、もうその頃でもあまり見かけなくなっていた木造の風呂なし共同玄関・炊事場・トイレという古いアパートだった。僕は部屋は六畳間で、何故か床の間があってその床の間には一応シンクがあって簡単な食事は作れるようにはなっていた。置いてある家具はカラーボックスと机と椅子と小さなテーブル、そしてステレオに小さなテレビに小さな冷蔵庫。それだけだった。すぐ近くに銭湯があって、一番風呂にもよく入っていた。近所のおじいさんたちと仲良くなって、日曜日に頼まれて物置の修繕なんかを引き受けたこともあった。
◆家賃は、確か一万五千円ぐらいだったはず。誤解のないように言えばその当時でも格段に安かった。それぐらい、オンボロのアパートだったんだ。アパートの裏にあった喫茶店のコーヒーは確か300円ぐらいじゃなかっただろうか。喫茶店のママは僕ら学生に優しくて、煙草を切らして買おうとするとよく自分のをくれた。ピザトーストが美味しくて、よく食べていた。
◆アパートの近くには、アルバイトで知り合ったSさんが出した小さな居酒屋があった。カウンターだけで十人も座ったら満席の本当に小さな部屋。Sさんは何故か僕を気に入ってくれていて、毎晩晩ご飯を150円で食べさせてくれた。ご飯に味噌汁に焼き魚だったりハンバーグだったりその日の仕入れによっていろいろ。自分の晩ご飯と一緒に僕の分も作ってくれたんだ。代わりに僕は皿洗いや片づけや、常連客の相手をしたりしていた。
◆まだ携帯電話もネットもない時代。日常の情報は新聞とテレビとラジオだけ。予備校に行って友達と少し遊んで部屋に帰ってきて、晩ご飯を食べようとSさんの居酒屋に行くと、Sさんと常連のMさんの二人だけで、そして店に流れる有線からはジョン・レノンの曲が流れていた。Sさんが、何故か暗い顔つきをしていて僕に言った。
「聞いた?」
「何を?」
「ジョン・レノンが殺されたって」
◆もちろん、ビートルズは大好きだった。ショックを受けて目の前が暗くなった、というほどのファンではなかったけれど、思わず「ええっ!」と大声を出して、椅子にストン、と座った。殺された、という言葉が本当に信じられなかった。有線はずっとレノンの曲を流していた。
◆時代はバブルへ向っていた。四畳半フォークを地で行くような暮らしをしていた僕も、すぐに小奇麗なマンションへ引っ越した。銭湯へ通う代わりに毎朝熱いシャワーを浴びはじめた。DCブランドの白いシャツを着たり、シャワーコロンをつけたりし始めた頃だ。
◆そんな暮らしをしていた。

思い出すと幸せな気持ちになる曲は2016年12月07日

◆晴れたり曇ったり雪が降ったり。
◆音楽が大好きな中年のおっさんなので、自分で意識して音楽を聴き出してからもう四十数年になる。これまでも聴いてきたアルバムの数はきっと少なく見積もって一年間に100枚としても4000枚だ。100枚ってことはないのでおそらくは一万枚は聴いているだろう。iTunesにもきっとその半分ぐらいの曲数は入っていると思う。歌謡曲からロック、ジャズ、フュージョン、ブルーズ、フォークソング、ニューミュージック、J-POP、アメリカンポップス、フレンチポップス、ヘビーメタルなどなどなどジャンルは多彩だ。クラシックも少しはあるか。大好きなミュージシャンはたくさんいるし、思い出の曲もたくさんある。いつ聴いても眼の奥が熱くなるような曲もある。
◆その中に、大好き! と大声では言わないけれど、ふとした折りにそのメロディがふいに頭に浮かんできて、つい口ずさんでしまう曲も何曲かいろいろとある。あぁ良い曲だったよなぁ、もう知ってる人は年寄りでコアな音楽ファンだけだよなぁ、っていう曲だ。
◆たとえば、加藤和彦さんの『シンガプーラ』だ。今、若い女の子にシンガプーラと言ったら「ネコ大好き!」と言われてしまうだろう。違うんだ、ネコの種類じゃないんだ。今でいうシンガポールはかつて〈シンガプーラ〉という名前だったんだ。アジアのエキゾチックな情緒あふれるイメージでの〈シンガプーラ〉だ。どこかで聴ける人は聴いてほしい。ゆったりとしたアジアンテイストで、加藤和彦さん独特の浮遊感溢れる佳作というべき一曲だ。
◆初めて聴いたのはたぶん中学生の頃だ。まだインターネットも何もない時代。シンガポールなんて写真か映画かテレビで観るしか、しかもほとんどそんな機会もない頃だ。ただ、歌詞の〈熱い風かきまわす 羽広げる扇風機 西東 血が混じる あの子の瞳に魅せられた シンガプーラ 人生を忘れそうこのアジアの片隅で〉その雰囲気にだけ憧れた。
◆誰にでも勧める名曲、とは申し訳ないけどたぶん言えない。でも、きっと人生の中でふっと思い出すと幸せな気持ちになってつい口ずさんでしまう歌。魅せられた歌。そういう歌はきっと誰にでも一曲はあるんじゃないか。僕にとって『シンガプーラ』はそんな歌だ。写真の『それから先のことは』に収録されている。アルバムタイトルの『それから先のことは』も同じく名曲だ。

『花咲小路三丁目のナイト』です2016年12月05日

◆曇り。明日からはまた雪が降るとか降らないとか。hanasakiknight
◆さて、今年最後の単行本新刊です。『花咲小路三丁目のナイト』(ポプラ社)です。〈花咲小路シリーズ〉の第四弾になります。
◆四丁目の怪盗紳士、一丁目の刑事さん、二丁目の花屋の花乃子さんときて、今回のお店は三丁目にある〈喫茶ナイト〉です。
◆ただし、普通の喫茶店ではなく喫茶と銘打ってはいるものの実情は〈レンタルビデオ屋〉さんになっています。しかも、花咲小路商店街唯一と言っていい〈深夜営業〉の店です。オープンはだいたい夕暮れ時、閉めるのは明け方。つまり夜にしか営業していません。もうひとつ言えば〈ナイト〉は〈Night〉ではなく、〈Knight〉です。でも商店街の誰もそんなことは知りません。どうしてそんな風になったのかは、読んで確かめてみてください。
◆語り手は、この〈喫茶ナイト〉の主である〈円藤仁太〉の甥っ子である〈堂本望〉。まだ二十四歳の若者です(仁太は四十半ばです)。違う街で大学を出て会社員として働いていたものの、ある事情でどうしても会社を辞めざるを得なくなり、悩んでいるうちに小さな頃〈変な叔父さん〉として慕っていた仁太のところ〈喫茶ナイト〉にやってきます(仁太の姉が、望の母親です)。そこから、望の仁太叔父さんとの日々が始まりました。
◆なにしろこの〈円藤仁太〉、商店街で生まれて育ったものの〈謎の人物〉としても有名でした。放浪癖があり高校時代にふいっと学校を辞めて海外を放浪して、帰ってきたかと思うと祖父の遺した〈喫茶ナイト〉を受け継ぎ営業を始めたのです。放浪していた間のことは誰も何も知りません。さらに仁太の営業品目は〈夜中の相談事〉です。夜にならないと話せないような、他の人には聞かせられないような人生の重要な悩み事。それを仁太に持ち掛けてくる人はけっこうたくさんいるのです。「夜の町でしか泳げない人間もいる。そういう連中の面倒を多少見てやるだけさ」。そう言って仁太はニヤリと笑いますが、望も否応無しにそれに巻き込まれていきます。
◆もちろん今回も〈花咲小路商店街〉の皆は登場します。セイさんも、淳ちゃん刑事も、ミケさんも、花乃子さんも、めいちゃんも北斗も克巳も活躍します。楽しんでいただけたら嬉しいです。
◆なお、今回で一応一丁目から四丁目まで出ましたけど、この後も〈花咲小路シリーズ〉は続いていきます。次は何丁目のどんなお店が舞台になるか、お楽しみに。

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