SHOJI YUKIYA OFFICIAL SITE sakka-run:booklover’s longdiary since 1996.12.18

Diary

『マイ・ディア・ポリスマン 春は始まりのうた』が文庫化です。2020年07月09日

◆ようやく晴れて気温も26度まで上がった日。
◆文庫になる見本が届きました。『マイ・ディア・ポリスマン 春は始まりのうた』(祥伝社文庫)です。〈マイ・ディア・ポリスマン〉シリーズの第二弾ですね。いつもそうなのですが、シリーズにするつもりで書いたものって本当にないんです。この作品もその一作で終わりのつもりで書いたものが意外と好評でじゃあシリーズにしましょうか、と担当編集さんと話してシリーズ化になったと。とはいえ、もう作家になって18年。最初の段階できっちり設定を作ることは息をするようにしてしまうので、困ることはほとんどなく、第二弾を書いたものです。一作目で主人公の一人である若いお巡りさん〈宇田巡〉が元は刑事だったという設定を置いといたので、何故刑事だった者が交番勤務になったのか? という疑問を膨らませる形で物語を作りました。祖母から〈平場師〉の才能を受け継いだもう一人の主人公マンガ家〈楢島あおい〉は無事高校も卒業して晴れて宇田巡と堂々とお付き合いできるようになりました。ウキウキしながら毎日を過ごしていましたが、ある日、交番で勤務している宇田を見張っている男に気づきます。〈何故お巡りさんを?〉天才掏摸であるあおいはその男のポケットから正体がわかるものを掏摸とろうとしましたが、なんとそこにか〈警察手帳〉が。〈どうして?〉。一方、宇田巡は幼馴染みである公太から相談を受けます。「お前、妖怪とか化け物を信じるか?」。公太はそんなようなものに荷物を奪われたというのです。宇田を見張る謎の男、頻発する〈化け物〉の目撃例。宇田とあおい、そしてその仲間たちが事件ともつかない謎を解き明かそうとします……。
◆警察官が主人公であり、けっこうハードな内容は詰まってはいますが、あくまでも事件にはならない不可思議な出来事。若い二人のラブラブな日々を交えて物語は進んでいきます。楽しんでいただけたら嬉しいです。
◆そして何度も書いていますが、この〈マイ・ディア・ポリスマン〉シリーズは第三弾まで出ていて、そのうちに第三弾も文庫化されるとは思いますが、シリーズが続くかどうかは文庫の売り上げにかかっております。もしもこのままでシリーズが続かなかったらあぁ終わったんだなと思ってください(^_^;)
◆この日記も新刊の告知しかしなくなってしまいましたが、相変わらず連載原稿を書いていくのでいっぱいいっぱいの毎日です。以前はここを毎日のように更新するエネルギーもあったのですが、本当に年を取っていくとエネルギーの総量が減りますね。でも、いつかまたのんびりと日記を書けることもあるんじゃないかと思います。
◆世の中が、世界が、どんどん悪いように酷い方向に向かって加速しているような気もします。まるで人類がその坂道を昇りきって転がり落ちて行くような感じもしています。でも、ひょっとしたら、ですが、転がる石には苔は生しません。形は変わり続けます。ローリングストーンです。転がり砕けてそこから輝く何かが飛び出すのかもしれません。
◆暑い夏がやって来ます。カラッとした空気を、美味しいスイカを、蚊取り線香の香りを楽しみます。

『マイ・ディア・ポリスマン』が文庫になります。2020年06月05日

◆天気が良くてカラッとしている正しく北海道の初夏の気候。
◆すっかり新刊が出たときにしか更新しない日記になってしまった。それじゃあいかんなぁと思っているんだけど、日記のネタもないことだし、以前は捻り出していたんだけどそれすらも難しくなってしまった。とにかく原稿を書くこと以外にエネルギーを使わないでおこうとしています。
◆祥伝社さんから刊行されていた『マイ・ディア・ポリスマン』が文庫になります。今月の12日ぐらいには書店に並ぶのではないかと。これはウェブで掲載されていたもので、シリーズ化の予定はまったくなかったのですが書いてみると意外と好評で単行本発売前からシリーズ化が決まり、重版などかかってしまった作品ですね(嬉しかったのですがちょっと驚きました)。この後に『マイ・ディア・ポリスマン 春は始まりのうた』『マイ・ディア・ポリスマン 夏服を着た恋人たち』と、今までに三作シリーズとして出しています。
◆さて、単行本のときにも自分で日記に書いた紹介文をそのまま引用しちゃいますが、物語の舞台は東京近郊のとある門前町〈奈々川市坂見町〉です。〈東楽観寺〉というお寺の門の横にある古い建物を交番にした〈東楽観寺前交番〉。そこに勤務する若きお巡りさん(25歳)が宇田巡(うためぐる)巡査です。〈東楽観寺〉の跡取りで副住職の大村行成は小学校の同級生。宇田巡査は小学校までこの町に住んでいたのですが親の都合で引っ越し、巡査になって赴任してきて再会しました。ある日、宇田巡査と行成副住職が交番前で話をしていると、女子高生の楢島あおいがやってきます。あおいは「ぜひ写真を撮らせてください!」と宇田巡査に頼みます。あおいはマンガ画家志望で、今度交番のお巡りさんを主人公にしたマンガを描きたいので、その資料にしたいと。「いいですよ」と快諾して宇田巡査はあおいに写真を撮らせます。ところが、あおいが去った後にそこには謎の財布が……そんな感じで、この坂見町に住む様々な住人たちが、宇田巡査とあおいを中心にちょっとした出来事の舞台上に浮かび上がってきます。実は宇田巡査はこの町に昔住んでいただけではなく大いなる縁があり、さらにはあおいにもちょっと普通ではない秘密もあって……。という感じの物語です。お巡りさんが主人公ではありますが、大きな事件が起こるわけではなく、のんびりとゆるやかに少しばかりの恋の香りも漂い、けれども〈人に歴史あり〉という物語になっていきます。シリーズではありますが、物語は一作ごとにきちんと完結しています。
◆そしてなんと、文庫カバーイラストは新しく描きおろしです。普通は単行本のものをそのまま使うんですけどね。予算を掛けていただきました(^_^;)。さらにぶっちゃけた話になってしまいますが、この後二作目の『マイ・ディア・ポリスマン 春は始まりのうた』もすぐに文庫化されまして、文庫本の売り上げ次第ではこのシリーズもう少し続けようかという話になっています。どうぞよろしくお願いします。
◆新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で世界が変わってしまいました。さらには黒人差別問題でアメリカを中心にデモや暴動が起きています。そして国内では(汚い言葉で申し訳ないですが)能無しでクズで愚かな政治家たちが政治をめちゃくちゃにしています。こんなにも欲と利権にまみれた国会議員たちを支持する人たちがいるというのが心底信じられません。考え出すと何も手に付かなくなります。どうやったら全員消し去ってしまえるとかそんなことばかり考えてしまい、原稿が書けなくなります。
◆力の無い自分が嫌になります。子供たちに希望を与えられない大人になってしまっていることが悔しくてたまらなくなります。
◆だから、希望を書くしかないんだと、毎日自分を奮い立たせています。

『イエロー・サブマリン 東京バンドワゴン』が出ます2020年04月22日

◆晴れたり曇ったりだけど急に気温が下がって冷たい風の日。
◆今月24日頃に発売される『イエロー・サブマリン 東京バンドワゴン』(集英社)の見本が届きました。いつも家に来てくれるクロネコさんの一人は僕と同じコンササポなので、このひどい状況が早く終息してサッカーが観たいね、と会話。
◆近頃は必ず話題にしますが、いつも装幀をお願いしている装幀デザイナーさんが、どんな色にするか毎回悩んでいると(^_^;)。でも今回のようにタイトルに色の名前が入っていると装幀の色も決めるのに楽でいいですね。もちろん黄色も鮮やかなこんな感じのデザインになりました。
◆前々作『ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン』そして前作『アンド・アイ・ラブ・ハー 東京バンドワゴン』と、大事な人たちの死や別れに向き合う内容が続き、イメージ的にしんみりしたそしてしっとりとしたものが続いたので、次は賑やかな楽しく行こうかなと考えたときに、そういえばビートルズナンバーでも有名なこの曲を使っていなかったな、と。正直この〈イエロー・サブマリン〉は実にのんびりとしたゆるやかな曲調なので、イメージタイトルに使いづらいなとは思っていたのです。でも続いたしんみりした雰囲気を変えるのにはちょうど良いと決めました。いつも通り、前作『アンド・アイ・ラブ・ハー 東京バンドワゴン』の最後から数日後から物語が始まります。
◆テーマというほど大げさにではありませんが、毎回ビートルズのタイトル曲の歌詞の内容を物語のイメージ付けにしています。〈イエロー・サブマリン〉の歌詞は大ざっぱに訳すと〈黄色い潜水艦が僕らの家でそこでみんなで幸せに暮らしている〉というものです。おそらくはいろんな隠喩に富んだものなのでしょうが、ストレートに〈家〉というものをイメージして物語を組み上げました。
◆そして今回はテンポも意識してスピードアップしたいと思って、いつもは一篇の中に二つぐらいの出来事が起こってそれが収束していくという形式にしているのですが、あえてシンプルにひとつの出来事に絞っています。その分読みやすくかつ一本の流れでストレートに物語が進行していってるのではないかと。
◆この作品を書き上げたのは昨年のことです(毎回そうなのです)。ですから、新型コロナウイルスに関しては物語中には影も形もありません。来年に予定しているシリーズ次作は四年に一回の〈番外編〉ですからそこにも関係はしてきません。ただ、再来年からの〈本編〉ではどうするかまだ決めていないのですが、でもきっと新型コロナウイルスで変わってしまった世界は出てこないような気がします。出てきたとしても〈(架空の)ウイルスが流行って大変だったな〉という別の形で表現することになるような気がします。
◆既に今回のインタビューが〈青春と読書〉に掲載されていますので、リンクからそちらも読んでいただければと思います。東京に行けなくなってしまったので電話インタビューです。写真も二年前に撮った写真を使っていますのであしからず(どうせ大して変わっていないです(^_^;))。
◆とにもかくにも、今回もいつも通り堀田家とその周辺の皆に周りで巻き起こる様々な騒ぎや人間模様を、賑やかに騒がしく描いています。少しでも愉しんでいただけたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。

『ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン』文庫です2020年04月10日

◆曇り。平年以下の気温で寒い一日。
◆すっかり新刊が出るとき以外は日記を更新しなくなってしまった。更新したい気持ちはあるのだが、筆が進まない。原稿を書く以外のエネルギーが減ってしまっている感じだ。ひょっとしたら何か新しいことを始める時期に来ているのかもしれないなぁ。あれこれ考えているんだけど。
◆そして今月の17日頃に発売予定の文庫新刊『ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン』(集英社文庫)の見本が届きました。シリーズとしては13作目ですね。いつも通りに〈東京バンドワゴンシリーズ〉のサイトにも書いていますが、いつかは使おうと思っていた名曲〈ヘイ・ジュード〉をここで使いました。この曲はビートルズ関連の本では、離婚したジョン・レノンの息子であるジュリアン・レノンにメンバーが「落ち込むな、良い事もあるさ」と歌ったものだということが書かれています。これを僕は父親から息子へ送る歌と解釈して、今回は〈父から息子〉というものを意識して、全体の構想を練りました。
◆そもそも堀田家には強烈な個性を持った父親がいます。勘一もそうですし、我南人もそうです。地味な紺だって実は小説家という個性的な仕事を持った父親です。青なんか見た目からして派手な父親です。そうして、それぞれが息子なんです。勘一にしても草平の息子ですし、我南人も勘一の息子。息子の最大のライバルは父親というのはよく言われることですが、父親にとってもいちばん身近なある意味でもライバルは息子なわけです。人生を送る中で様々な形で訪れる、父と息子の関係性や感情を、堀田家とその周辺の人たちの中で描いてみたつもりです。
◆今回は、父と息子の別れの場面がいろいろと重なる時期になりました。作者でありながらそう言うのはなんですが、本当に偶然に重なっていくんですよね。もちろん、僕が考えている物語ではあるんですが、実質15年も続いているシリーズになると、こんなところでこれが繋がってしまったのか、と作者でさえびっくりする展開になることが本当によくあります。登場人物たちの人生が、本当に物語の中で生きているんですよね。『ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン』もそういうことを実感する一冊になりました。いつものように、楽しく賑やかな堀田家の一年の日々を愉しんでいただけたら嬉しいです。
◆今、まさに世界中が新型コロナウィルスの渦に飲み込まれています。本当に世界中が国家存亡の危機にまで追い込まれている状態です。私たちは、病気と闘う医療の世界の方々に全てを託して、自分たちができること〈感染を広めない〉ということだけを考えて息を潜めて生きていくしかありません。国の経済が本当に壊滅状態にまで追い込まれるかもしれません。感染が止まることを、ワクチンが開発されることを、ただそれだけを祈り、自分たちが生きていくために耐える時が続くでしょう。
◆小説家は物語を書くことしかできません。不安に押しつぶされそうな日々の中、堀田家の物語が皆さんを少しでも楽しませてくれれば、明日への光になってくれればと願います。

『三兄弟の僕らは』が出ます2020年03月11日

◆3月11日。あの日はこちらも震度4ぐらいだった。
◆ちょうど次男と友人が家で遊んでいて、あまりの揺れに一度外へ避難させた。はっきり覚えているけれどあの年も今年と同じぐらい雪が少なくて、道路はアスファルトが出ていた。そんな日に、今月19日頃に発売予定の単行本新刊『三兄弟の僕らは』(PHP)の見本が届きました。
◆自分でそんな風に言うのはどうかとは思うのですが、僕はけっこう多作なのですが、無性にシンプルな話を書きたくなるときがあります。たとえば『東京公園』とか、『花歌は、うたう』とか、『小説家の姉と』とか、『風とにわか雨と花』とか。読んでいただいている方ならなるほどと思ってくださるでしょうが、この作品もそこに並ぶような物語なんじゃないかと。
◆今まで姉妹の話は書いたことがあるのですが、そういえば兄弟の話は書いたことがないな、と。意識はしていなかったんですけど、それはたぶん自分に姉はいるけれど、兄弟がいないことにも繋がるのかな。姉弟の話ならするすると書けますけど、兄や弟という存在はまた違うものでしょうからね。そこで「じゃあ三姉妹の話は書いたので、三兄弟の話にしましょうか」と編集さんと話して、そこからスタートした物語です。
◆今はたぶん〈三兄弟〉という存在も少ないのでしょうが、どこにでもありそうなごくごく平凡なけれどもささやかでも幸せな家庭に育った三兄弟、朗と、昭と幸。三人とも特別な才能があるわけでもないし取り立てて優秀でもないけれど、それなりに良い子に育っていた三兄弟。けれども、ある日突然、両親を交通事故で失います。呆然とする三兄弟を助けてくれたのは、北海道に住んでいた母方の祖母の栄枝。両親の死(栄枝にとっては娘と娘婿の死)に見舞われた三兄弟のために、葬儀などあれこれと栄枝が動き、そうしてようやく身も心も落ち着いた頃から物語が始まります。
◆その後の展開は、何せシンプルなお話なのであらすじを言ってしまうともうそこで話はわかってしまうので(^_^;)、控えますが、ぜひ読んで頂ければと。愉しんでいただけたら嬉しいです。
◆9年前、4月に出る〈東京バンドワゴン〉シリーズの印税から義援金として寄付をするので本を買ってくださいというお願いをしました。9年経った今も、大きな金額での寄付はしていませんが、毎月、小額ですが各所への寄付はずっと続けています。協力していただいた方も多かったと思います。ありがとうございました。これからも、毎月の寄付は続けていきます。小説家としての収入がある限りはですけれど(^_^;)。

ページトップへ