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Diary

暮らしていくのに思い出は必要ないが生きていくためには必要だ2018年11月23日

◆ついに雪が積もった。今日なんか午後からかなりの吹雪だ。
◆私が現在住んでいる江別市というのは札幌市の隣町なのだが、まぁ札幌のベッドタウンという認識で間違ってはいない。JRで札幌駅まで大体20分ぐらいだ。そこに蔦屋書店ができた。とても大きくて書店だけじゃなくてレストランなどのお店も揃っているちょっとしたショッピングモールだ。僕の本も置いてくれたらいいなぁと思っていたのだが、どうやら〈江別ゆかりの作家〉ということで棚にたくさん置いてくれているらしい。ありがたいありがたい。そんな話をしていたら今度は故郷の旭川市にある星野リゾートのホテルでは、ロビーに僕の本をけっこう置いてくれているという話がTwitterに。これも旭川市出身ということで置いてくれたのかな。ありがたい話です。
◆大体、おおよそ、概ねなんだが、旭川市と札幌市と江別市にそれぞれ20年ぐらい住んでいる(まだ60歳にはなっていないが)。高校卒業までの少年期から思春期を旭川市、働き出して結婚して子供が生まれるまでの青年期を札幌市、自宅を建ててそこで育った子供達が巣立った中年から今までを江別市といった感じだ。今では江別市がいちばん長いんだけど、会社で働いている時期には札幌に通い、仕事を辞めてからは自宅に篭る生活をしているので、正直なところ江別の町にはあまり詳しくない。同じように生まれ故郷の旭川市も高校までだったからそんなに詳しくない。やはり遊びまくった札幌の街をいちばんよく知っている。もちろん時が流れているのでお店とかにはすっかり疎くなってしまったけど、車を買って走り回った青年期だったから、札幌なら隅から隅までどこにだって案内はできる。
◆今も旭川には同級生や古い友人が数多くいる。もう滅多に会わなくなってしまったけれど、会えばあの頃の懐かしい昔話でいろいろ盛り上がる。札幌にはかつてのバイト仲間や元同僚や仕事仲間がたくさんいる。先日も元同僚たちと美味い飯を食って語ってきた。江別にはご近所さんはもちろん、子供たちの同級生がいて○○くんのお父さんだ、と、今も道ですれ違えば笑顔で挨拶してくれる。
◆淡い思いも、苦さ甘さも、幸せな夢も、遠い思いも、全部が思い出になってそれぞれの町に染みついている。今も、作られていく。思い出はいくらあっても荷物にならないけど金にもならない。でも、生きる力になる。

日々雑感2018年11月20日

◆東京は晴れ。札幌近郊は曇り。
◆一晩東京に行っている間に初雪が降ったようだ。といってもすぐに溶けてしまったのでまだまったく雪を眼にしていない。今年は観測史上最も遅い初雪になったようだ。このまま雪が降らなくても全然オッケーなんだけどまぁそうなると農作物とかも影響してくるのでね。過不足なく降ってくれ。そしてできれば少しずつ積もってくれ。毎日でも、少しだけ雪かきするなら運動不足になる冬場には本当にいいのだ。
◆昨日、東京では来月の単行本新刊『テレビ探偵』(KADOKAWA)の販促で対談とインタビューを受けてきた。誰と対談したかは後ほどのお楽しみに。しかし連続での対談とインタビューはやはり疲れる。普段喋らないからなぁ。以前〈東京バンドワゴン〉が人気になったときに確か一日4本のインタビューを受けたときがあったが、あのときはマジ人気俳優の映画のプロモーションでの苦労がわかったよ。スターは凄いよね。一日に4本どころじゃない数のインタビューを受けてニコニコして同じような質問に答えるんだからさ。いやマジで。
◆前にも書いたが東京の定宿が来年から全室禁煙になってしまう。もうかれこれ十年泊まっているから自分の家のように落ち着くホテルだったんだけど、部屋の中で一本も吸えないのはツライ。ホテルを探すのって意外と面倒臭いのだ。いくら部屋の様子がサイトで見られるからと言っても使い勝手なんかは実際に泊まってみないとわからないしね。今の定宿は本当に使い勝手も雰囲気も良かったんだ。ホテルマンとも顔見知りだったしさぁ。同じ系列の別のホテルはまだ全面禁煙にならないみたいだからそっちにするかどうか、次に東京に行くのは来年だろうから、そのときに考える。
◆まぁ喫煙者は既にマイノリティだ。あれこれ文句は言わない。過去の映画の喫煙シーンを消したりその時代のドラマを作るときに喫煙を無理にさせなかったりしたら、もちろん文句を言うが。
◆だからと言って今の朝ドラで喫煙シーンがまったくなくても文句は言わないよ。あのドラマの時代には特に男性はほぼ喫煙者でどこでもいつでも吸っていただろうけど、そんなシーンをいれなくたって素晴らしいものは素晴らしいんだからね。

もう冬支度2018年11月04日

◆小春日和と言っていい天気。ここのところずっと天気が良い。
◆すっかりここの日記の更新が途絶えてしまった。ただひたすら毎日原稿を書いているのはもちろんだ。っていうか毎日それしかしていない。どこにも出かけていない。ずーっと家にいる。まぁ散歩をしたりイオンに買い物に行ったりはしているけれど。つまりここに書くネタもほぼないのだ。おまけに近頃は本当に原稿を書く体力がなくなってしまっていて、以前なら一晩で書けた量が一週間かかったりする。つまり、他のことに気が回らない状態なのだ。なので、ここの更新もついつい滞ってしまう。困ったもんだと思うがこればっかりはどうしようもない。とにかく地道に原稿を書き続けるしかない毎日なのだ。
◆何もここに書くことがないとはいえ、日々の暮らしに様々なことはある。たとえば法事だ。いち社会人として大人として家族のある身としてはそういうものにもきちんと顔を出さねばならぬ。まぁこういう特殊な仕事をしているので「忙しくて行けない」と言えばそれなりに皆は納得してくれるのだがそうもいかない。つまりきっちり大人の責任を果たしている。
◆そういえば、久しぶりに元同僚たちと会ってきた。広告制作会社で働いていた頃の同僚たち数人と一年に何度か会って旨い酒やら旨い料理やらを食べているんだけど今回は一年ぶりかもしれない。全員が今も広告の仕事を(あ、僕は違うがまぁ同じ類いの仕事だ)しているが、一人を除いてフリーの人間ばかりだ。いつも男三人女二人の五人でそして全員五十歳過ぎのおっさんとおばさんばかりだ。五十過ぎのおっさんとおばさんでどんな話をするのか。もちろん自分と自分の身の回りの健康と病気と葬式と老人の話ばかりだヽ( ´ー`)ノ。これはもうどうしようもない。そういうものなのだ。そして僕が心筋梗塞をやって以来初めてあったのその話も延々としていた。そうしたら、支払いに向かうとお店の店主が「黒ニンニク、心臓にいいですよ」とボソッと言ってきた。何でもご主人も心筋梗塞をやったんだとか。「それ以来食べているんですけど、いいですよ。今たくさんあるんで良かったら差し上げます」と。僕の話が聞こえていたらしい。初めて行ったお店なのに何ていい人なんだろうと、喜んで黒ニンニクをたくさん貰ってきた。妻と二人で食べていたんだけど、しばらく食べ続けようかと話している。
◆北海道はもう冬支度に入っている。ご近所の皆さんも次々とタイヤをスタッドレスに替えている。庭の木々の冬囲いもどんどん進んでいる。季節は巡る。今年の冬はどんな冬になるだろうか。

『春は始まりのうた マイ・ディア・ポリスマン』が出ます2018年10月07日

◆雨。台風から温帯低気圧に変わるといういつもの北海道上陸パターン。
◆また日記の更新の間が空いてしまいましたが、ありがたいことに相も変わらず締切りに追われ続けています。体調は、まぁぼちぼちです。そしてもう気温はすっかり秋の気温。まだ暖房は点けていないので、家の中が薄ら寒い。室温は25度ぐらいはあるんだけど忍び込んでくるのは秋の空気です。
◆そんな日に届いた見本は、もう間もなく発売の単行本新刊『春は始まりのうた マイ・ディア・ポリスマン』(祥伝社)です。〈マイ・ディア・ポリスマン〉シリーズの第2弾ですね。
◆東京近郊の架空の町〈奈々川市坂見町〉が舞台です。元々は門前町だったので〈東楽観寺〉というお寺に続く商店街があり、その〈東楽観寺〉の門の横にあるのが〈東楽観寺前交番〉。そこにやってきた元刑事である若き警察官〈宇田巡〉と、出逢った当時は女子高生だった〈楢島あおい〉。この二人の恋を背景にして、二人の友人や町の人たちが織りなす〈ちょっと事件めいた出来事〉を綴っていくのが〈マイ・ディア・ポリスマン〉シリーズです。これもシリーズにするつもりはまったくなかったのですが(^_^;)、お陰様で第1弾が好評だったのでシリーズ化。今は第3弾である『夏服を着た恋人たち マイ・ディア・ポリスマン3』がこちらの〈コフレ〉で連載スタートしました。
◆第2弾である『春は始まりのうた マイ・ディア・ポリスマン』は、あおいが高校を卒業する春から始まります。巡とあおいはお互いの好意を確認し合い、おつきあいを始めていました。もっとも女子高生と警察官なので、目立つことはしないでひっそりと。でも、あおいが卒業してしまえば話は別です。マンガ家としてデビューが決まっているあおいは晴れて社会人。未成年というところはあるものの、堂々と巡とデートできるとウキウキしています。その嬉し恥ずかしの卒業式の日。無事に式も終わって帰ってきたあおいは、交番に着く前に気配の怪しい人物をコンビニの前で見つけます。明らかに交番を見張っているのではないかという気配。不審に思ったあおいはその天才的な掏摸の技を使って何者なのかを探ろうと懐のものを狙いましたが、そこにあったのは〈警察手帳〉。何故私服刑事が交番を見張っているのか? そもそも刑事であった巡が何故〈東楽観寺前交番〉に制服警官としてやってきたのかという謎があったのですが、そこに絡んだ何かなんだろうかとあおいは心配します。一方、巡は同級生である公太から〈化け物に荷物を盗まれた〉と聞かされますが……。という感じで話が始まります。前回と同じく、大きな事件は起こりませんが、今回は巡が刑事を辞めさせられた理由に大きな謎があり、新たな登場人物も増えます。またマンガ家としてデビューしたあおいもそれに巻き込まれていきます。
◆図らずもシリーズ化したこの物語、坂見町というごくごく普通の、東京近郊の町に住む人たちの過去や今の問題を〈東楽観寺前交番〉を中心にしてゆるくかつ賑やかにそして若い恋を取り混ぜ爽やかに描いていきます。楽しんでいただけたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。

僕の中の〈物語の人〉。樹木希林さん。2018年09月20日

◆晴れ。残暑の名残のような昼。
◆地震の影響は僕の身の回りではほぼなくなった(もちろん、いまだ被害に苦しんでいる方々はいらっしゃる)。余震も忘れた頃に若干あるがそれはもうしょうがない。近所のセイコーマートの棚もおおよそ平常時に戻っているし、節電も一応解除になった(でもこれからも節電はしていこう)。流通にまだ若干の遅れはあるようだから、落ち着いたら、冬になる前に震災グッズの見直しをしようと思う。この国に住んでいる以上は、地震は避けられないのだから。
◆樹木希林さんがお亡くなりになった。ご病気の様子から覚悟はしていたものの、喪失感が本当に大きい。まだ前の芸名である悠木千帆さんの頃から、その演技は際立っていた。そして『寺内貫太郎一家』での祖母役は本当に凄かった。まだ三十代だったのに、お祖母さん役だ。ホームドラマの中のコメディリリーフとしての役割を十二分に、存分に果たしていた。存在感を際立たせていた。あのドラマはとりもなおさず〈東亰バンドワゴン〉を練る際にベースにしたドラマだけど、それも樹木希林さんの演技があってこそ僕の中にしっかりと根付いていたからだ。是枝監督の『歩いても歩いても』『海よりもまだ深く』の母親役も忘れられない。本当に、本当に、唯一無二の女優さんだった。軽みと凄みを同時にその身の内に抱えそれを表現できた演技者だった。樹木希林さんがいたから、僕の中に何人、何十人もの〈物語の中の女性〉が存在している。本当に、ありがとうございました。
◆物語を書くときに、特定の俳優さんを思い浮かべることは一切ない。ただ、僕の中に何十人何百人もの〈物語の登場人物〉がいるのを、作家になってから感じることができる。それは今まで観てきた映画やドラマで俳優さんたちが演じてきた〈人間〉だ。その人たちの人生が僕の中にずっと存在している。だから、僕は物語のアイデアを思いついたらすぐさまそれにピッタリの登場人物たちを〈キャスティング〉できる。あの映画のあの俳優が演じた役、ではなくて〈どこかで出会ってよく知っている人〉として思い浮かべることができる。そういう意味で、小説家小路幸也を作ってくれているのは、映画やドラマだとも言える。傲岸不遜を承知で言えば僕の〈台詞回し〉はどんな小説家より、脚本家よりも上手いと自負している。それは全部、映画やドラマで活躍してきた俳優さんに育てられたものだと思っている。
◆幼い頃から大好きだった俳優さんたちが、旅立っていく。そういう年齢になってしまった。自分もいつ旅立つかわからない。向こうで会えたときに、少しは胸を張って「頑張りました」と言えるようにしよう。頑張ろう。いい物語を書こう。たくさんの俳優さんに育ててもらったこの感覚で。

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