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単行本 : 文庫本 : アンソロジー

sorafuru11「空を見上げる古い歌を口ずさむ pulp-town fiction」講談社

〈のっぺらぼう〉を視てしまう少年、というアイデアから始めた物語。構想中に父の死などがあり、自分が幼い頃を過ごしたカタカナの町〈パルプ町〉の思い出を整理してみるのもいいのではないかと思い、書き進めたもの。ミステリとかホラーとかファンタジーとかそういうジャンルにはまったく拘らずに書き上げた。良くも悪くも、すべてのものが詰まっていると思う。

takakubunko12「高く遠く空へ歌ううた pulp-town fiction」講談社文庫

デビュー作のシリーズでの二作目。前作の世界観を受け継ぎながら〈パルプ町〉の物語から〈解す者〉という運命を背負った者たちの物語にしようとした作品。続編として同じ舞台、登場人物を使って展開するのは簡単だったけど、あえてそこから出て、外へ向かってみた。もちろんいずれまた「パルプ町」へ戻っていこうと考えている。まだ書きたい事はたくさんあるから。

文庫本

utatama13「うた魂」朝日文庫

初めての映画ノベライズ作品。とはいっても以前のゲームシナリオ執筆の経験があるので作業としては同じ感覚。他の方が作った物語を自分なりにアレンジする作業というのは個人的には楽しくて好きだ。映画の中では表現していなかった脇役の設定を一部変化させてサイドストーリーという形に昇華させて、本筋のストーリーに組み入れた。違和感なくまとまったと思うけど、映画も観て確認していただければなと思う。

tbwb24「東亰バンドワゴン」集英社文庫

子供のころ、家族と一緒に見て、家族の泣き笑いを感じていた〈ホームドラマ〉。もう単純にその世界をきちんと表現したいというだけで書いた物語が、まさかこんなに親孝行な子に育ってくれるとは思ってもみなかった。2008年現在、家族の生活を心配することなく執筆できているのは間違いなくこの作品のおかげ(それ以前は相当キツかった)。大好きだったホームドラマと、この作品を愛してくれたすべての人へお礼を。

hometown45「ホームタウン HOMETOWN」幻冬舎文庫

〈家族〉というものに対して、僕は希薄な感情しかなかった。自分の家族を持った今はどうなのだろうと考えることも多い。そういう自分自身への問い掛けから浮かんだアイデアを形にしてみた。故郷の旭川市も舞台になっているので、ちらっとデビュー作の舞台の〈パルプ町〉という単語も出てくる。独身の頃、札幌で一人暮らしをして、旭川へ帰るときのいろんな思いというのも、この本の中には詰まっている気がする。

shebunko16「シー・ラブズ・ユー 東亰バンドワゴン」集英社文庫

堀田家は、東京のあの下町にあって、いつ行っても僕を温かく迎えてくれる。帳場で勘一じいちゃんが煙草を吸っていて、カフェでは藍子さんと亜美さんがコーヒーを淹れてくれる。「最近どんなことがありました?」と僕が訊くと、勘一じいちゃんは「そうさなぁ」と腕組みして、「そういやこんなことがあったな」と教えてくれる。いつまでもいつまでも、そうやって堀田家と、この本を愛してくれた皆さんと過ごせますように。

tokyobunko17「東亰公園」新潮文庫

小学生のときに初めて観た洋画『Follow Me!』。その美しさや俳優たちに憧れたことをはっきりと覚えている。当時の担当のGさんと次作について話していたときにその映画を思い出し、それと同時に、東京に住むある人のことを考えた。その人が、木漏れ日の公園をゆっくりと歩く姿を頭の中に思い浮かべながら書いた作品。公園って、いいよね。いろんな思い出がある。読者の心の中にある公園の思い出と、この作品が寄り添ってくれればいいなぁと思う。

bokutachi28「僕たちの旅の話をしよう」MF文庫

子供たちのお話を読みたい、という担当さんのリクエストでアイデアを考えはじめたときに浮かんできたのが〈青空に浮かぶ赤い風船。そしてそこに括りつけられた手紙〉という絵。そこに以前にあたためていた眼がいい少年と鼻が利く少女、耳の良い少年というアイデアを加えてできあがった物語。何度も言うけど僕はことさらに子供好きというわけではない。でも、子供が元気に遊び回っているのを見るのは気持ちが良い。だからそういう世界が長く続いてくれることを願うという単純な思いだ。ガキども遊べ。大人は頑張れ。

sbmtbw29「スタンド・バイ・ミー 東京バンドワゴン」集英社文庫

シリーズ3作目の文庫化。色んな意味でこのシリーズのすべてのフォーマットがかたまった作品と言っていいと思う。同時に、この先のシリーズをどうやって展開しようかなと担当さんと話し合いながら進めた作品。時代がどんなに変わっても堀田家はずっと相変わらずなんだとも確信した。番外編の構想も同時に進んでいたので、ひょっとしたら折り返し地点の作品になったのかもしれない。堀田家を愛してくれる皆さんとともに、これからも書き続けていきたい。

hanabi210「おにいちゃんのハナビ」朝日文庫

映画ノベライズ作品としては2作目。他の方が作った物語を自分なりにアレンジする作業というのは個人的には楽しくて好きだ。映画の中に登場する主人公の友人たちの設定を変化させて全体をまとめてみた。個人的にはかなりうまくまとまったと思うけど、映画も観て、出来を確認していただければなと思う。

zantippy211「探偵ザンティピーの休暇」幻冬舎文庫

初めての純然たる文庫書き下ろし作品。正統派のハードボイルド私立探偵もののフォーマットと、日本人なら誰もが知る映画の主人公のパターンを重ね合わせるというなんでそんなことをするんだ(^_^;)という設定で書いた探偵もの。かなりくすりと笑わせようとはしているのだけど、物語自体はそれなりにハードなもの。そのギャップを軽く楽しんでいただけたならいいなと思う。主人公の探偵ザンティピーはけっこうお気に入りなのでまたどこかで出会いたい。

utaubunko212「うたうひと」祥伝社文庫

ミュージシャンになりたかった。中学一年のときにアコースティックギターを手にしてから十年間、そう思い続けてきて、諦めたのは二十四歳の時。その年に広告制作会社に入った。とことん音楽的な才能がなかった。それでも、十年間、歌を作り続けたことが、その後の生活を支えてくれた。広告の仕事も小説を書くことも、原点は〈歌を作る〉ことだった。今も、これからも、うたをうたい続ける人たちへ、憧れとエールを込めて。そして憧れだった人に解説も書いてもらえてこんなに幸せな本もないと思う。

poly213ポリリズムポプラ文庫ピュアフル

JIVEさんから出た青春と音楽というテーマで編まれたアンソロジー『Heart Beat』の文庫化。僕は中学生で放送部の男の子が主人公の『piecemaker』という作品で参加している。中学校で放送部だったのは実は僕自身で、その辺の体験なんかも作中には反映されている。この作品、実は短編連作で、今後定期的に出されるジャイブさんの本で展開するつもり。なお、タイトルが、拙作『HEARTBEAT』とかぶっているのはまったくの偶然

morningbnk214モーニング Mourning実業之日本社文庫

18歳から22歳の4年間。その頃を振り返るという作業はあまりしたことがなくて、そういうものを書いてみましょうかと担当さんと話しあって出来た作品。当時仲の良かった仲間は今ももちろん友人ではあるけれど、それほど頻繁に会えるわけじゃない。むしろ、会えない。それは物理的な距離の問題もあるけど、やはりそれからの二十数年間で、お互いに抱え込んでしまったものが多過ぎるからだ。それがどうしようもなく愛おしくも、悔しい。そして男同士の話は、書いていてある意味では気楽でいい。

calender215カレンダーボーイポプラ文庫

ウェブという土台があって生まれたアイデアから作り上げた物語。たぶん、誰もが考える〈大人の意識で子供時代に戻れたら〉という願いを物語にしてみたけれど、そこから生まれたのはどうしようもなく切ない感情でしかなかったような気がする。戻れない、ということをしっかり抱えていないと、前は向けないものだと思う。子供の頃の自分に恥じない生き方を、今の僕はしているだろうか。していけるだろうか。そして、自分の子供たちにきちんと伝えられるだろうか。伝えることはできなくても意志だけは持ち続けなくてはと思う。

sokohebunko216そこへ届くのは僕たちの声新潮文庫

2011年の今となっては懐かしくなってしまったデビュー2年目の物語。今でもはっきりと覚えているのは、必死で書いていたということ。今ももちろんそういう気持ちはあるのだけど、やはりかなり違う。だからと言って作品も良いかとなるとそれはまた別問題で。子供たちの不思議な力というものを、親になった人は少なからず感じていると思う。息子たちも赤ちゃんの頃に、不思議な出来事が何度かあった。そういうものと、幼い頃に憧れた宇宙への思いを物語にしてみた。

mybh217マイ・ブルー・ヘブン 東亰バンドワゴン」集英社文庫

本編ではなく、語り手であるサチとその連れ合いで店主である勘一がどのようにして出会い、夫婦になったのかを描いたスピンオフ作品。あるインタビューで〈お正月特番新春スペシャルドラマ〉と表現したけど、もうそのまんまのイメージで書き進めた(午後九時からの二時間半かな(^_^;))。あの時代のホームドラマへのオマージュとして書き始めたこのシリーズ。文庫としてはシリーズ4作目。基本的にこのシリーズは毎年登場人物たちが現実と同じように年を重ねていくけど、番外編が出たときにはその一年はなかったことになる。でも、次の本編が出るときには皆さんと同じ時間を堀田家は過ごすことになります。こうやって連ドラ形式とスペシャルドラマ形式で、何年も書き続けていければいいなぁと心から思う。

bunko21821 twenty one」幻冬舎文庫

学校の教室という空間で、同じ時間を過ごした仲間たち。気が合わない奴も、優秀な奴も、どうしようもない奴も、全員が同じ方向を向いて同じ空気を吸っていた。極端な話だけど、何十年後かに総理大臣とホームレスという立場になってしまったとしても、どこかでばったり会ったのなら、その瞬間にそこに戻っていってしまうはずだ。ほんの一瞬かもしれないけど、同じ笑顔で語りあえるはずだ。かつての仲間たちへの思いを描いてみた。単行本になってから数年経ったけど、この物語への思いはまったく変わらない。結局僕は〈仲間〉を追い求めているんだと思う。家族を描くと言われているけど、それもひとつの〈仲間〉なのだ。きっとこれからも書き続けていくもの。

natsunojiorama119夏のジオラマ」集英社みらい文庫

新しく創刊した〈集英社みらい文庫〉。そのラインナップに加えてもらった作品。担当編集さんが僕の子供たちへ向けた作品が読みたいと言われ、あれこれ考えました。その中で浮かんできたのが〈夏休み〉。どうして思い出の中の夏休みはあんなに楽しかったのだろうと思う。冷静に考えればヒマでどうしようもない日もあったはずだ。友達がどっかに行って淋しい思いをしたかもしれない。それでも、記憶の中にある夏休みはただただ楽しいものしかない。小学生の頃の仲間は、永遠だ。もう二度と手に入れることはできない。そんな日々を描こうと思った。仲良しの仲間と経験するひと夏の冒険。ほんの少しだけ大人になる夏の日。誰にもある、人生の中の宝石のような思い出。夏休みは、楽しい。

cowhouseb220COW HOUSE」ポプラ文庫

ろんな年代の人たちが登場して楽しい物語を、というような話を担当さんとしていて、そのときにポンと浮かんできたのが〈みんな丑年〉という思いつき。それと、とても良い環境にある豪邸というのが組み合わさって出来上がった物語。僕の作る物語は大抵そうなんだけど、深いメッセージ性などはない。ただ、青空の下、牛が草を食む広い牧場を眺めてのんびりするような気持ちで楽しんでもらえたら。そんな感じで書き進めた物語。と言いながら実は物語に牛はまったく登場しない。何故丑年かというと当然僕が丑年だから。仕事というものが中心になっているお話で、ものすごい理想的なファンタジーのような内容にはなっているけれど、仕事って本来理想を高く持ってするもの。厳しかったり辛かったりするのが当たり前だけど、志はいつも高く持ちたい。

hayasakab221早坂家の三姉妹 brother sun」徳間文庫

姉妹の物語。僕はきちんとしている人々を描くのが好きだ。よく毒がないとか見栄えが良過ぎるとか言われるけど、ちゃんと生活している人たちは皆いい顔をしているし、毒をことさら表に出すこともない。でもやっぱり生きていけばいろいろある。悩みや悲しみや辛さはあるけど、それにもきちんと対応していく、していける。早坂家の三姉妹はごくごく普通の女性ばかりだと僕は思っている。美点があるとすれば、ちゃんと毎日を暮らしていけるところだと思う。そういう人たちを、そういう暮らしをしている人たちを、きちんと描いた方がいいと思う。だらしのない人たちは、やっぱりどこまでもだらしがないのだ。日本人が開国したその昔から訪れた外国人たちに称賛されたような日本人の美徳を、忘れてはいけないと思う。

bamb222ブロードアレイミュージアム」文春文庫

そもそも海外文学、特にアメリカ文学が好きだ。今でも読むのは日本文学より海外文学が多い。1920年代から30年代のアメリカ。かの国への憧れと、その時代のブロードウェイにたむろした小悪党たちを描き続けた大好きな作家への敬意も込めた一冊。デイモン・ラニアンというその作家の本は、今はもう古本屋でしか手に入らない。賑やかさと華やかさ、そしてどんな状況でも人生を謳歌するという姿勢と時代。そんなものを表現したかったのだけど、成功したかどうか。オマージュというのにはあまりにも稚拙な物語になってしまったかもしれないけれど。

sorahanab223空へ向かう花」講談社文庫

物語に出てくる〈不幸な事故〉は実際に起こった事件に材を取っている。それに対して、第三者である僕は何も言えない。その場で見ていた人間でなければわからないことが多すぎるだろう。それでも、言えることはただひとつではないのか、という思いを込めて、登場人物に言わせたかった。ラストでイザさんという中年の男が血を吐くような思いで喋ったことは、僕の心の声だ。大人たちには、子供たちの未来を見つめる義務と責任がある。ただ、闇雲にそう叫べばいいというものでもないと思う。未来は子供たちのものだ。大人が勝手に色をつけていいはずがない。選ぶのは、その時代を生きる子供たちだ。我々大人たちは、少しでも、わずかずつでもいいから自分の身の回りを善き方向に変えることに一生懸命にならなければならないんじゃないか。今は誰もが果てのない情報過多の海を泳ぎ続けるような時代だ。灯台が必要なのじゃないかと思う。善きものとはどういうものなのかを示す光。どういうことなのか。答えはシンプルなはずだ。

zanhotoke224探偵ザンティピーの仏心」幻冬舎文庫

文庫書き下ろし作品。正統派のハードボイルド私立探偵もののフォーマットと、日本人なら誰もが知る映画の主人公のパターンを重ね合わせるというなんでそんなことをするんだ(^_^;)という設定で書いた探偵ものがシリーズ化してしまいました。今回もニューヨークマンハッタンの腕利き探偵ザンティピーは北海道の温泉にやってきて事件に巻き込まれてしまいます。もう〈湯けむり探偵旅情編〉とでも銘打ってやった方がいいんではないかというぐらいです。翻訳物のハードボイルドを知っている人ほど楽しめるのではないかと思いますので、もし気に入っていただけたらぜひ翻訳物ハードボイルドをどうぞ。

nokosareb225残される者たちへ」小学館文庫

物語を構成するいくつかの要素ある映画の脚本から持ってきたいわば原案付きの物語。小さい頃に見ていたSFなんかでは〈団地〉はとても象徴的なものだった。あの頃は確かにそれ自体が新しい生活の象徴だった。今は、廃虚になっているものもあるという。時の経過によるそのギャップに強く魅かれ、そこから立ち上がっていったストーリー。結局僕たちは〈町の子供〉であるんだという思いは昔から持っていた。そこに、何が見えるだろうか。

bokumirai226僕たちの旅の話をしよう みらい文庫版」集英社みらい文庫

子供たちのお話を読みたい、という担当さんのリクエストでアイデアを考えはじめたときに浮かんできたのが〈青空に浮かぶ赤い風船。そしてそこに括りつけられた手紙〉という絵。そこに以前にあたためていた眼がいい少年と鼻が利く少女、耳の良い少年というアイデアを加えてできあがった物語。何度も言うけど僕はことさらに子供好きというわけではない。でも、子供が元気に遊び回っているのを見るのは気持ちが良い。だからそういう世界が長く続いてくれることを願うという単純な思いだ。集英社みらい文庫に収録するにあたって、総ルビ、挿絵付きの小学生向けの体裁にした。子供たちに読んでもらえると嬉しい。で、ガキども遊べ。大人は頑張れ。