何者でもないうちに2016年07月26日
◆晴れたり曇ったり。
◆7月も後半になってしまった。冷や汗が出てくるぐらいに締切りがマズイ状況に陥っているのだが、今年も何人かの物語好きな子供たちに会う時期になってしまった。明日から三日間だ。
◆札幌の北海道立文学館というところで毎夏休みに〈中高生のための文学道場〉というものを主催している。そこでの講師を頼まれてもう五年目(たぶんそれぐらい)だ。物語を書いてみたいという中高生に、僕の考えている〈物語の書き方〉の基本を教えている。僕は専門学校や大学での講師の経験もあるので教えることは得意なのでいいのだが、そろそろ他の方に変わってもらってもいい時期じゃないかと思っている(^_^;)。
◆ただ、小説が好きで物語を書いてみたい(あるいは書いている)という子供たちに会えること自体は楽しい。残念ながら、正直なところ、きらめくような才能に出会えることは今までなかったのだが、「おっ、これは」と思える子供がいたことはある。そういう子がやがて素晴らしい小説を書いて世に出てくれればなぁと期待している。
◆僕が中高生の頃はひたすらギター抱えて歌っていた。作詞作曲してシンガーソングライターになりたいと思っていた。思えば高校生の頃の僕の頭の中には〈音楽〉しか詰まっていなかったと思う。その頃は小説もそれほどの量は読んでいなかったはずだ。好きこそ物の上手なれ、と言うが生憎とギターの腕はまったく上達しなかったけれど、〈自分だけのものを作る〉という感覚だけはその頃に磨かれていったかもしれない。
◆それと同時に〈自分よりすごい奴は世の中にたくさんいる〉という軽い挫折と現実を味わったのもその頃だ。中学生や高校生、そして大学生の頃に何かに夢中になって、成長や挫折を繰り返すというのはものすごく大切なことだと今なら思えるし、同時に、そういう学生生活を味わえたのは幸せなことなんだと思う。
◆まだ何者でもないうちに、何でもやってみた方がいい。もしここを読んでいる学生の人がいたら、そうしてほしい。世の中に出たら辛いことばかりが増えていく。その中に、でもけっこう捨てたもんでもないぞ、と思えることも増えてくる。それはきっと、何者でもないうちに経験したことがたくさんあればあるほど感じるものかもしれない。