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Diary

『評決』という本。2015年10月25日

◆初雪。hyouketsu
◆と、書くと何かロマンチックにも思えるがみぞれ混じりだったり風が強かったり外には絶対に出たくないという天候。まぁまだ積もるには早いのでこの雪もすぐに融けるのだ。
◆自分の進路に悩んだ時期にたまたま読んだ本に勇気づけられるということも、読書好きの人の人生ではままある(はず)。僕の場合はこのバリー・リードの『評決』だ。ご覧の通りポール・ニューマンの映画で知った人も多いだろうと思う(僕は映画になる前に読んだ)。主人公は酒浸りの弁護士だ。人生の目的を見失い、どん底まで堕ちた弁護士。そこに舞い込んできたのが巨大病院を舞台にした医療過誤の訴訟事件だ。彼は信念を思い出し、勇気を奮い立たせ、自分を信じて、巨大病院を相手側に徒手空拳で立ち向かう。そんな話だ。
◆これを読んだときの僕は確か22、3歳だ。とにかく、自分は何をして生きていけばいいのかと悩む状況に直面していた。周りの同級生は皆就職したりして自分の道を決めていた。自分はと言えばミュージシャンへの道は諦めていた。バイトしていた喫茶店も辞めた。じゃあどうするんだ、と。本当に道標も何もなかった。まだ若いから何でもできるさと嘯いてはいたものの、何ができるんだろうと焦ってもいた。そんなときに、この本を読んだ。心が震えたのを覚えている。自分を信じることこそが必要なんじゃないかと思えた。
◆それからすぐに、僕は広告制作会社に就職した。広告のこの字も知らなかったのに、履歴書一枚で飛び込んだのだ。バブルへ向かっていた時代の助けもあって、何だかおもしろそうな男だ、とそこの社長に拾ってもらったんだ。
◆14年勤めたその会社を辞めて、作家になってしばらく経ったときに社長に会った。社長は「お前を雇ったときのことはよく覚えている。ズブの素人のくせに妙に自信たっぷりだったからな」と言って笑った。
◆作家になれたのはその会社で社会人としての何もかもを、一から鍛えられたからだ。本当に感謝している。この本に巡り合えたことにも。

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