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Diary

僕たちは改札口への階段を駆け上がるために同じ方向へ歩き始めた2017年06月23日

◆曇り後晴れ。気温も上がった日。でもまた明日は雨だとか。
◆噺家は世間のあらで飯を食い、ってな言葉がありますが小説家も似たようなもので大概は自分の生きてきた人生を切り売りしてるようなもの。もちろん事実をそのまま書いちゃあさっぱり自分が浮かばれないしノンフィクションになっちまうので、そこを幹にして、あるいは枝葉にして、嘘と体験をうまいことごっちゃにしていくのが小説。虚実皮膜っていう言葉もあるけれど、要するにそういうもの。
◆よく昔のことを思い出す。書いている最中に、自分の体験がふっと浮かんできてそれを物語の中に溶け込ませることで、気持ち的にも内容的にも〈物語内リアリティ〉というものが生まれてくる。そういうのが上手くいくと、満足できるシーンができあがっていく。
◆今まで書いてきたものの中に、女性との出来事で体験を元にしたものがあるか、と訊かれると、ありますと答える。どの物語のどの場面とは言えないけど、その女性が読んだら「あ、これは私と小路くんのことだ」と思う場面はある。そういう女性たちとは現在まったく交流はない。許可も取っていない。なので、「勝手に書いて!」と怒っているかもしれない。申し訳ないって謝るしかないのだけど、できれば苦笑いで許してくれたらいいなと思っている。
◆そうやって思い返すと、自分の人生はわりと平凡だと思っていたんだけど、意外とそうでもなくてまるでドラマのワンシーンのような、文字通りドラマチックなシーンというのはけっこうたくさんあった。たまにネタにしてるんだけど、〈リアル〈ルージュの伝言〉〉をされたこともある(これも書いたら怒られるかなーと思っているんだけど)。
◆いつか書いてみたいシーンがある。地下鉄のホームの向こうとこっちに、僕と彼女は立っていた。そのほんの何十秒か前に改札口のところで「じゃあね」と手を振って別れたのだから、お互いの姿を確認しあっていた。最初に僕のホームに電車が入ってくるのがわかったので、彼女は僕に手を振った。僕が振り返している最中に電車が滑り込んできてお互いの姿が見えなくなった。でも、僕は乗らなかった。走り去った地下鉄のホームにまだ僕が立っているのに、彼女はちょっと驚いた顔をした。その瞬間に彼女のいるホームにも電車が滑り込んできて、そして電車が走り去ったけど、彼女もまだホームに立っていた。お互いに笑みを交わして、僕たちは改札口への階段を駆け上がるために同じ方向へ歩き始めた。
◆そういうようなシーンが、これから書く小説に出てきたら「あ、これは小路さんの体験談か」と思ってくださいヽ( ´ー`)ノ

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