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Diary

『駐在日記』が文庫になります2020年02月16日

◆相変わらず雪が少ない我が家近辺。
◆札幌は先日のドカ雪でそこそこ帳尻を合わせてきたようだけど、我が家近辺は何だかもう春の足音が聞こえてきたぐらいの雪の少なさ。農作物への悪影響がなければいいんだけどね。
◆中央公論新社さんで出した『駐在日記』が今月20日ぐらいに文庫で出ます。〈中公文庫〉ですね。
◆そもそもは森繁久彌さんの1955年の映画『警察日記』があって、それをたまたま観たあとに中央公論新社の担当編集さんから「うちで書いてください」という話をしていて、「じゃあ駐在さんの日記なんかどうですかね?」と軽く言ってしまったところから始まりました。
◆横浜で刑事をやっていた蓑島周平ですが、ある事件で外科医であった花さんと知り合い、そして結婚します。事件によって右手を怪我して外科医を続けられなくなっていた妻に、警察官の妻ではあるけれども、穏やかで静かな暮らしを与えたいと、刑事ではなく駐在として、田舎に赴任してくるところから物語が始まります。
◆続編である『あの日に帰りたい 駐在日記』のときにも書きましたが、この駐在さん、元刑事の〈蓑島周平〉にはモチーフにした刑事がいます。1975年に放映された刑事ドラマ〈俺たちの勲章〉に出てきた中村雅俊さん演じる刑事です。ドラマでは最終回に彼は刑事を辞めてしまうのですが、もし彼が刑事を辞めても警察官は辞めずにいたらどんなふうになるかなぁ、こんな感じになるんじゃないかなぁと思いながらキャラクター像を作り上げました。妻である元外科医の花さんには特にそういうモチーフにした人物はいないのですが〈花さん〉という名前が好きだったので(^_^;)、いつかその名前を持つ女性を描いてみたいなぁと思っていました。時代設定としては昭和50年です。もちろんまだ携帯電話は影も形もないですし、パソコンもfaxも普及していない時代です。駐在所のある田舎の村で起こる様々な人間模様を描く事件とも言えないかもしれない事件を、周平と花さんの夫婦が解決していきます。
◆この『駐在日記』は続編を書きましたがなかなか好評をいただいているようで、もう少し続けられるシリーズになりました。今年の夏ぐらいから連載スタートの予定なので、再来年にはまた周平と花さんの新しい物語を皆さんにお届けできるかもしれません。なお、続編のタイトルである『あの日に帰りたい』は深い意味があるわけではなく、舞台になったその年のヒット曲です(^_^;)。ですから、また次の新作もそういうタイトルになるのではないかなぁ、と思います。愉しんでいただけたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。

『銀の鰊亭の御挨拶』が出ます2020年02月12日

◆マイナス16度まで下がったと思ったら今日明日はプラスに。
◆明日なんか4月の陽気になるっていうのよ。とんでもないわー。
◆そんな日に今月19日頃に発売予定の単行本新刊『銀の鰊亭の御挨拶』(光文社)の見本が届きました。サイン本も100冊以上作ったので、どこかのお店に入ると思います(どこに入るかは僕はわかりませんごめんなさい)。
◆さて、光文社さんから初めての本になります。光文社さんには実はちょっと思いがありまして、その辺は実はこの物語を連載していた〈小説宝石〉さんのコラムに書いたので(まだ出ていない)ここに書いちゃうことはちょっと避けますが、でも書いちゃいますけど心の師として敬愛する矢作俊彦さんの名作をずっと出していたのが光文社さんだったんですよ。なので、デビュー以来、光文社さんからも声が掛からないかなぁとは思っていたんですが、ずーーーーっと声が掛からなかったんですよね。まぁ文庫の解説とかなんかちょこちょこお話はあったんですけど、「ぜひうちでも執筆を」とは言われなくて十数年。ようやくお声掛けいただき、連載して本になったのがこの『銀の鰊亭の御挨拶』です。
◆北国の港町の丘の上にある高級料亭旅館〈銀の鰊亭〉。そこは母屋の他に個室としての別邸もあったのですがそこで火事が起こり、主とその妻が焼死体で発見されるという事故が起きてしまいます。しかも若女将である娘〈文〉も親を助けようとして怪我を負ってしまい記憶障害を起こし……そしてほぼ一年後〈銀の鰊亭〉に、若女将の甥っ子である主人公〈光〉が大学入学のためにその町にやってきて、〈文〉と一緒に住むようになります。しかし、その際に聞かされたことは……という感じで物語が始まります。
◆ぶっちゃけ、また変なミステリっぽい物語を書いてしまったなーというのはあります。当初は編集さんとバディものを書きましょうかと話していて、確かにバディものには違いないんですが、変形のバディものになってしまいました。内容はミステリの様々なパターンを踏襲しています(タイトルからして……わかりますよね?)が決して本格ミステリではありません。刑事も主役級で登場しますが警察ものでもありません。言うなれば、帯にもありますけれど青春ミステリーでしょうか。そしてある意味では〈家族〉の物語でもあります。愉しんでいただけたら嬉しいです。
◆ありがたいことに光文社さんはこの続きを〈小説宝石〉でまたよろしくと言ってくれました。なので、主人公達は変わらずに若干スタイルを変えてまた書きます。そちらもお楽しみに。
◆近頃はちょっと夜になると調子が少しばかりよろしくない。具合が悪いわけじゃないんだけど、昼間に頑張っていた心臓がお風呂に入った後にぐったりしてしまうみたいな感じだ(あくでも感じ)。なので、執筆ペースもまた遅くなっている。この辺はまぁ上手く付き合っていくしかないんだろうなぁと。
◆2月も半ばになる。春の足音が遠くに聞こえてくるような気がする。

『スローバラード』が文庫になります2020年01月30日

◆荒れそう、と言いながらも今のところ穏やかな日。
◆本当に今年は雪が少ないのだが、昨年のTwitterを確認すると2月にやたらと雪が降ったようだ。しかも大雪だ。そうだったらいやだなぁと。できれば少しずつ降って最終的にはいつもの積雪量になってほしい。雪も降らなきゃいろんなところが困るんだよね。
◆『スローバラード Slow ballad』が文庫になりますので見本が届きました。〈実業之日本社文庫〉です。〈ダイ・シリーズ〉の第4弾となり、これで『モーニング Mourning』(実業之日本社文庫)から『コーヒーブルース』、『ビタースイートワルツ』と続いてきた弓島大を主人公としたこのシリーズも一区切りになります。物語は、ダイの友人ヒトシの電話から始まります。ヒトシの息子である智一が東京に行くと書き置きを残して家出をしたと。何の心当たりもなく、さらには教頭という立場上仕事を休んで捜すこともできないヒトシのためにダイは自宅に下宿していた同じく友人ワリョウの息子の明を連れて、水戸のヒトシの家へ向かいますが、そこで発見したのは歌舞伎町での写真……。物語はさらに行方不明の高校生女子や傷害事件、淳平のストーカー事件など様々な様相を見せはじめます。そうしてダイたちは過去の自分たちと向き合うことになっていくのですが。という感じで進んでいきます。
◆そもそも『モーニング Mourning』を書いた時点ではシリーズ化などはまったく考えていなくて、続きを書いてみませんかと言われたときにさてどうしようかな、と。『モーニング Mourning』自体が過去と現在を行きつ戻りつする展開だったので、それじゃあ書いていない年代のダイたちを書いてみようかと始まったシリーズです。ダイもその仲間であるワリョウとヒトシ、淳平も僕と同い年『スローバラード Slow ballad』で現在の、つまり連載している当時の自分の年齢に追いつくことになったので、これで一区切りにしましょうと当時の担当編集さんと話しました。最後の物語はどうしようかと考えたときに、やはり『モーニング Mourning』に戻らなきゃならないだろうな、と。そもそも『モーニング Mourning』を書くときに考えたのは〈仲間たち〉の絆でした。それだけを書こうとした物語です。それならば、大学生だった彼らの絆を描いたのだから、最後は50代になって家族もいて社会的責任も何もかも抱えた大人になった、そしてそろそろ老いというものも感じはじめた彼らの絆を描かなければと思いました。だから、『モーニング Mourning』ではあえて描かなかった彼らの人生に大きなものを残したある人物のその後も、『スローバラード Slow ballad』ではしっかりと描いています。これだけを読んでも一応理解できるようにはなっていますが、男たちの30年間を描いているシリーズです。できれば、最初の『モーニング Mourning』だけでも先に読んでいただけると、より愉しめると思います。
◆計らずもシリーズになったものの、この〈ダイ・シリーズ〉はそれぞれのキャラクターに思い入れができました。今のところまだ予定は立っていませんが、別の形でダイたちのこれからも描いていきたいと思っています。

『国道食堂 1st season』が出ます2020年01月11日

◆とにかく雪が少ない。
◆ここ何十年間での記録になるぐらいに雪が少ない札幌近辺。我が家は今季から除雪機(見たことない人はググってね)を導入したのだがそれもまだ二回しか動かしていない。まぁ少ない分には雪かきしなくていいから楽なんだけど、あまりにも少ないと農業にもいろいろと影響が出るんで、そこそこ、ドカッと来るんではなくちょこちょこ降っていただきたい。
◆届いたのは今月16日ぐらいに発売予定の単行本新刊『国道食堂 1st season』(徳間書店)の見本。〈読楽〉さんに連載していたものをまとめました。〈1st season〉となっているのは、連載中から編集部では好評で、これはこのまま続編を、という話になって、最終回翌月にはもう〈2nd season〉を始めたからです。
◆担当編集さんと「次は男の話を書きましょう」と決めていて、男の話とはなんだろうと考えたときにふっと思い浮かんだのが〈プロレスのリング〉でした。リングがどっかにあったら面白いなと思ったときに「食堂か」と、出てきて、それで話の骨格ができあがりました。ドライバーたちが立ち寄る田舎の国道沿いにドライブインのような食堂があって、その中にリングがあったらいろんなドラマができあがるな、と。タイトルもそのままに『国道食堂』となりました。引退したプロレスラーである〈本橋十一〉が経営する実家でもあった〈国道食堂〉。そこに初めてやってきたのは配置薬のルート営業マン〈二方将一〉。新しくマネージャーとしてやってきたこの土地の初日にご飯を食べに立ち寄ったのですが、店内にあるリングに驚き、さらに店主である〈本橋十一〉にも驚きます。実は高校時代に〈本橋十一〉と会っていたのです。縁があって食堂に通いはじめる〈二方将一〉ですが、実は諦めていた夢があって……。と、物語はこの二人を中心にしますが、彼らに関係して〈国道食堂〉にやってくる人たちのストーリーが毎回語られていきます。その数は合計14人。年齢も職業も全部バラバラの14人の男たちのドラマが〈国道食堂〉のリングを舞台にして、〈本橋十一〉と〈二方将一〉の周りで起こっていきます。
◆そして〈2nd season〉ですが、〈1st season〉は一応話としてはそこで終わりますのでどちらか一方だけ読んでも通じるのですが、〈2nd season〉では〈1st season〉に出てきた男たちの周りにいた女性たちの物語になっています。たぶんですけど、その数も同じぐらいになると思います。ですから順番通りに読んでいただいた方がより物語に膨らみを感じられると思います。そちらも〈読楽〉さんに連載中ですので、お楽しみいただけたら嬉しいです。
◆幼い頃、夏休みになると家族や親戚で車で旅行をよくしていました。マイカーの時代だったんですよね。なので、ドライブインというものにはけっこうたくさん入りました。その中のひとつをとてもよく覚えているのですが、もう五十年も前に入ったその店が、外観だけですけど残っていて今も近くの国道沿いにあります。すごく印象的な出来事があったんですけれど、それは今回のネタとしては使いませんでした。また別の小説でどこかに出てくるかもしれません。
◆いろんな職業の男たちを描けたので、僕としても楽しく書けた『国道食堂』。愉しんでもらえたら嬉しいです。

春を待つ季節2020年01月01日

◆新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
◆今年は、いや今年からもう年末年始に実家に帰ることはない。自宅で夫婦二人で過ごす正月だ(いや正確には二人と一匹だけど)。
◆正月といっても普段から毎日ずっと二人でいるわけで、何にも変わることはなく、ただ食べるものがお雑煮とお節になるというだけ。二人の息子も特に帰ってくるわけでもない。便りのないのは元気な証拠だろう。僕もそういう息子だったから特に気にしない。
◆毎年同じことを書いているけど、新年を迎えたらもう雪国は〈春を待つ季節〉だ。実際には1月2月といちばん雪が多くなり寒さも一段と厳しくなって冬本番になるんだけど、それでも、どんどん陽が長くなり一日経つごとに春へと近づいていく。季節が冬になっていくんじゃなくて、春へと近づいていく。本当に、待ち遠しくてわくわくしてくる。そしてやってくる春という季節を喜ぶあの心持ちはやはり雪国に住んでみなければ味わえない。いいものなんだ。地元愛なんてものはまったくないし、どこでも住めば都と思っている人間だけど強いて北海道を離れようとも思わないのは、春という季節の喜びを味わえるからかもしれない。
◆毎年、締切りに追われる幸せな日々を過ごしている。今年も既に執筆予定が一杯だ。それをこなすだけで精いっぱいのような気もする。何かにチャレンジとか新しい地図ヽ( ´ー`)ノとか描いてみたい気もするけれども、現状維持できるということがもう本当に素晴らしいことだ。ありがたいと思う。その中でも、やっぱり今年こそ、という思いもある。もっといいものを、素晴らしいものを書きたい。
◆実は今年が五十代最後の年だ。だからどうだというのもないんだけど、六十代を迎える前に、おじいちゃんそろそろ免許返納を、と言われ出す前に、アクセルをベタ踏みできるもんなら踏んでみたいとも思う。
◆今年も、書き続けます。どうぞよろしくお願いします。

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