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Diary

『夏服を着た恋人たち マイ・ディア・ポリスマン』が出ます。2019年10月05日

◆曇り。
◆10月じゃなくて8月じゃないかっていうぐらいに暑い日が続いたりして近年は本当に秋の存在感が薄れっぱなしじゃないかと。
◆そんな日に10月11日頃に店頭に並ぶ予定の単行本新刊シリーズ第3弾『夏服を着た恋人たち マイ・ディア・ポリスマン』(祥伝社)の見本が届きました。
◆シリーズになるものって本当に最初はそんな予定もなくちょっと売れたので(具体的に言うと重版したので)次も書きませんか? って感じでシリーズになるのですよ(当社比)。なのでこの〈マイ・ディア・ポリスマンシリーズ〉もそんな風に始まったしまったのです。当初は交番のお巡りさん〈宇田巡〉と女子高生〈楢島あおい〉の物語だったのですが、シリーズになってしまうとあおいが女子高生のままだとなかなか動けないのでさっさと高校卒業してもらって、当初からの設定だったマンガ家さんになってもらいました。ある意味交番のお巡りさんは交番から動かないので、宇田巡査よりはフリーの身であるあおいの方が外に出かけることになりますね。でもめっちゃ売れっ子になるとあおいも外出できなくなってしまうので(^_^;)、もしもこの先シリーズが続いてもそんなに売れっ子マンガ家にはならないでしょうね。
◆宇田(うた)という名字も単純に〈うたのお巡りさん〉というのが楽しいな、と思ってさらに巡査だから巡(めぐる)という名前でもいいかと百パーセントダジャレでネーミングさせられた巡査〈宇田巡〉。毎回、大きな事件になりそうだけど、基本は交番のお巡りさんと町の人たちの生活を描いていく物語なので大きなものになる前に解決するというパターンで続いていますが、今回は暴力団による特殊詐欺と外国人就労者の問題を扱っています。タイトルにもあるように、あおいもれっきとした社会人になって、堂々と恋人として付き合えるようになった巡とあおい。そして事件のきっかけになるのも、あおいの父の親友で行方不明になっていた人が女性と一緒にいて、さらにはお馴染のメンバーになったドローン使いのカツヤとケイの方にも若い女性の姿があって、と、恋人たち(のようなものも含め)が三者三様の形で事件の中心に足を踏み入れていくものです。巡とあおい、そして親しい友人や仲間になっていった皆の活躍を愉しんでいただけたら嬉しいです。(余談で前にもお伝えしましたが、先月出ました『あの日に帰りたい 駐在日記』(中央公論新社)と〈交番のお巡りさん〉設定が被ってしまいしかもシリーズになってしまいましたが、本当にたまたまなんです)。
◆著者である僕もこのシリーズ、毎回装幀のイラストが楽しみなんですが、今回もとても可愛らしく爽やかでいいですね。とても58歳のおっさんの本とは思えませんヽ( ´ー`)ノ。タイトルは二作目を春に設定したので次の季節の夏にかけたものですが、アメリカの作家アーウィン・ショーの名作『夏服を着た女たち』からいただきました。本当に名作なのでもしも手にすることがあったらぜひ読んでくださいね(あ、『夏服を着た女たち』は現代小説です。お巡りさんとは関係ありません)。

小説を書くということは2019年09月27日

◆東京も札幌近郊も晴れていた。なかなか暑い。
◆一晩だけ東京に行っていた。KADOKAWAさんの主宰する〈角川文庫キャラクター小説大賞〉の選考会だ。選考委員なんて柄でもないのだが、KADOKAWAさんにはお世話になっているし三年間という短い任期だったので引き受けた。今年で三年目なので終了。お世話になりました。同じメフィスト賞出身の高里椎奈さんとも三年間一緒に審査できて楽しかった。高里さんまたどこかで会いましょう。
◆三年間やってきたけど毎年最終候補作のレベルが上がっていくことに驚いた。本当に一年目二年目三年目とぐんぐん上がっていった。それが僕ら二人が選考委員であることが要因だったら本当に嬉しいんだけどどうなんだろう。
◆候補作のジャンルも毎回バラエティに富んでいて、普段読まないようなジャンルの作品を読めたのもなかなか楽しかった。きっとげんなりするようなものもあるのかなぁと戦々恐々の部分もあったけど、さすがに最終候補に残るものだけあって、きちんと〈小説〉になっているものばかりだった。中には本当に「よくこれを最後まで書き上げたなぁ」と感心する作品もあり、初心忘れるべからずだなぁ、と自分に言い聞かせたりなんだり。
◆小説を書くというのはその人の(登場人物の)人生を書くということであり、よく〈人間が書けていない〉なんてネタのようにされる批評もつまりは登場人物の人生が見えてこない、ってことだと思う。それがたとえ高校生だとしての十何年間の人生の積み重ねは間違いなくその人の個性になっている。作者である書き手がそこをきっちり考えてやらないと、つまりその登場人物が生きてこないということだ。登場人物が勝手に動き出すというのは本当によくあることで、それはしっかりとその人の人生を作り上げているからこそ、その舞台で勝手に動いて自分の日々を作ってくれるのだ。
◆だから、小説を書こうとする人は、小説家になりたいという人は、毎日をきちんと生きていった方がいい。たくさん本を読んで映画を観てドラマを観てマンガを読んで、そしてたくさんの人たちの人生を思った方がいい。確かに想像だけで小説は書けるけれども、百人の知人がいてその人の人生を思える人と、五人しか知人がいなくて自分の人生しか思えない人なら、明らかに想像できる幅が違う。銀河系と太陽系ぐらい違う。少なくとも僕はそう思う。友達百人作ろうという話ではなく、百人の人の人生を思える方がいいと思う、という話だ。
◆打ち合わせもしてきた。また新しいお仕事の話もいただいた。ありがたいことだ。これでまた数年間小説を書いていける。自分の作品を世に出せる。
◆猫を飼ってから初めて僕が一晩留守にしたんだけど、飼い主が帰ってきても猫は特に反応しなかった。犬なら尻尾振って喜ぶのに。猫は「あら」って顔をして通り過ぎただけだった。今も寝ている。

いつかやって来る日に。2019年09月22日

◆晴れたり曇ったりの日。
◆妻が二日ほど実家の用で留守にしているので(逃げられたわけではない)、猫と二人だけの生活をしている。まぁ特に普段と変わりはないのだが、犬は散歩に行くと大きい用を足すので心配ないけど、猫はいったいいつ大きい用を足すかわからない。猫のトイレは僕の机からそう遠くない場所にあって音がするのでしたのはわかるのだけど、先日は猫はゴムを飲み込んで、それが出てくるまでは気が気じゃなかった。要するに妻がいない二日間、執筆と猫が寝ているとき以外は猫の様子をずっと気にかけている。遊んで攻撃もあるしね。
◆今、実家の整理をしている。もっとも実際にしているのは実家の近くに住む姉であって僕は何にもしていないのだが。近い将来というか、もうすぐに実家がなくなる日がやって来る。もう誰も住んでいないし、あちこち修理しなければ住めないほどになってきて、そして誰も住む予定がないのだ。それで、姉と話し合って決めた。淋しい気持ちもないこともないが、これが人生だろう。
◆今住んでいる自宅も、やがて僕ら夫婦がいなくなる日はいつか来る。そのときに二人の息子はどうするのか、話してはあるけれども折りに触れて確認しておいた方がいいだろう。息子たちが後始末に困るようなものは、残していってもしょうがない。僕が作家という職業なので、僕が(そして妻が)死んだ後に息子たちには著作権継承者という仕事も残ってしまうのだ。まぁ二人の息子にお金が残せるとは思えないけれども、でも僕の死後に突然復刊して映画やドラマになって売れてお金が入る、なんてことはまったくない、とも言えないから、そこんところはきちんとしておかないと。
◆それにしても、自分がそのときのことを考える年齢になるなんてまったく信じられない。今も不思議だ。頭の中は十代の頃からまったく変わっていないんじゃないと思えるのに。
◆長生きしたいとはまったく思っていないけれど、僕は善人ではないので案外しぶとく生き残るのかもしれない。わかんないけどね。こうやってずっと文章を書いていけるのなら、長生きしてもいいけどさ。

その後の猫のいる暮らしは2019年09月15日

◆涼しいかと思ったらけっこう蒸し暑い日。
◆猫のメイが我が家に来てから4ヶ月が経った。猫も随分大きくなって、そして人間も猫のいる暮らしにすっかり慣れた。元々は犬のミルを飼っていたんだから、動物のいる暮らしには馴染んでいたんだけど、やはり犬と猫では全然違う。散歩に行く行かないの違いはこんなにも大きいんだな、と思う。
◆何よりも、猫は呼んでも来ない。犬は来る。猫は来ない。来ないからこっちから行くしかないが行けば逃げることもある。どうやらメイは抱っこされるのを好まない猫のようだ。抱っこすることを拒んで逃げたりはしないけれど、抱かれてもほんの三秒で逃げる。この辺は個体差が激しいらしい。実家にいた頃にはたくさんの猫と暮らしていた妻はそう言っていた。できれば抱っこ好きの猫が良かったなー、と言うがこればっかりはどうしようもない。
◆呼んでも来ないのに、こちらが机についていると足元で身体をスリスリして「遊んで」と言ってくる。しょうがないな、と執筆を中断して遊んでやると急に「もういいわ」と言ってどこかへ行ったり寝ころんだりする。なるほど猫というのは本当に気紛れだ。
◆以前に全然悪さをしない、と書いたが、4ヶ月経っても本当に悪さをしない。よくソファや壁を爪で磨いでボロボロにされると聞くが、まったくしない。本当にしない。棚の上や階段などあちこちに置いてあった置物やぬいぐるみにも一切興味を示さないで遊んだりもしないので、片付けようと思っていたけどそのままになっている。何よりも、大量の本があるけれどそれにもイタズラしない。本棚の中に入ってよく寝ているけどそれだけ。非常に助かっている。
◆夫婦での旅行には行けなくなったけど(いや行こうと思えば手段はいくらでもあるが)、もうあちこち行ってから、そろそろ猫と暮らそうと決めて飼ったので何の不満もない。でも今年はまだ小さいので控えたけれど、来年は留守番してもらって野球は観に行こうと話している。
◆今までの作品にも猫はたくさん出てきているので特にこれから増えるということもないだろうけど、猫の生態には実体験も踏まえて書けるかな。
◆今年は本があまり出ていないのは、実は連載期間が長くなっているからだ。執筆体力が落ちて書ける枚数が少し減ってしまったので、今までは一年も掛からずに終わっていた連載が一年かそれ以上になっているから。なので、これからまたしばらく単行本の刊行が続きます。
◆具体的にはもう出る頃の9月『あの日に帰りたい 駐在日記』(中央公論新社)、10月には『夏服を着た恋人たち マイ・ディア・ポリスマン』(祥伝社)、12月には『花咲小路一丁目の髪結いの亭主』(ポプラ社)、1月には『国道食堂』(徳間書店)、3月には『三兄弟の僕らは』(PHP)、そして4月には〈東京バンドワゴン〉の新作ですね。あ、それとまだ言えませんが今年中にもう一作秘密の作品が出るはずです。どうぞよろしくお願いします。

『あの日に帰りたい 駐在日記』が出ます2019年09月14日

◆すっかり秋の気配が漂い始めた北海道。
◆ここの更新を途絶えさせてしまって随分経ってしまった。書くネタがないのもあるが、精神的に余裕もなかった。いや正確には余裕がなかったのではなく、余裕を作ろうとする余裕がなかったのか。それまでは上手くやっていた自分のエネルギーの振り分けを、執筆のこと以外にエネルギーを振り分けられなかったのだ。それじゃあいかんよなぁと反省している。これからまたここの更新もしていこうと思う。
◆そんなときに届いたのはおそらく今日ぐらいから出回る単行本新刊『あの日に帰りたい 駐在日記』(中央公論新社)です。前作『駐在日記』の続編ですね。シリーズになってしまいました。このシリーズは書き下ろしです。
◆時代は昭和50年、1975年から始まり、この続編では昭和51年になっています。僕の年齢に当てはめると14歳から15歳、中学生の時代の物語になっています。もちろんまだ携帯電話もパソコンも影も形もない時代。ようやくファックスが開発された頃でしょうか。その時代に、田舎の駐在所に自ら希望して、結婚したばかりの妻と一緒に赴任してきた警察官、蓑島周平と花が主人公です。語り手は妻の花。二人とも元々は横浜で、刑事と外科医でした。花が医師を辞めた理由になった事件で知りあい、結婚したのです。舞台はそのまま神奈川県の山奥の土地ですね。モデルにした地域はありますが、基本的には架空の田舎町です。
◆今の時代では限界集落とも言われるであろう田舎町ですから、駐在所に大きな事件などやってきません。前作でも窃盗やらなにやらの小さな事件は起こりますが、基本的にはその場で解決してしまうような小さなものばかりです。今回も、〈落とし物〉や〈逃亡犯〉〈霊能者〉に〈銃弾〉と、タイトルはなかなか物騒な話っぽくもなっていますが、全部駐在である周平の判断で、事件とはしないで済ましてしまうものばかりです。警察小説と帯には書いていますが、まったく肩を張らずに気楽に読める物語です。
◆実はこの元刑事の駐在〈蓑島周平〉にはモチーフにした刑事がいまして、1975年に放映された刑事ドラマ〈俺たちの勲章〉に出てきた中村雅俊さん演じる刑事です。ドラマでは最終回に彼は刑事を辞めてしまうのですが、もし彼が刑事を辞めても警察官は辞めずにいたらどんなふうになるかなぁ、と思いながらキャラクター像を作り上げました(あのドラマが大好きで、続編を観たかったんですよ)。あ、それと、前作の最後に犬を飼うことになり、名前はミルというのですが、これは小路家の亡き愛犬の名前です。いつかミルをどこかの物語に出せたらなぁと思っていたので、ここで登場させられて良かったです。
◆作者の僕にとってもこの周平と花の夫婦は好きなキャラクターなので、続編を書けたのはとても嬉しかったです。さらにシリーズが続くといいなぁと思いますが、それは本の売り上げ次第(^_^;)。手に取って楽しんでいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。

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