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Diary

そこにJAZZが描かれている2017年03月16日

◆晴れたり曇ったり。少し風の強い日。
◆小さなライブハウスに行ったことある人はどれぐらいいるだろう。そこで、身体が震えるほどの音量の演奏に包まれたことのある人はどれぐらいいるだろう。その音楽にいっぺんで魅せられてしまった人はどれぐらいいるだろう。僕はその一人だ。
◆人気漫画家である石塚真一さんの『BLUE GIANT』はそんなマンガだ。音楽のジャンルはJAZZだ。それも、ボーカルの入らない、純粋な演奏だけのJAZZ。そもそも音楽マンガってだけでとても難しいのに(だって、マンガからは音がしない)その中でも最も難解かもしれないJAZZだ。ロックバンドなら多くの人が知っているから想像もしやすいだろうけど、JAZZのトリオの演奏を生で聴いたことがある人がいったいどれぐらいいるんだろうか。そんなマンガを描こうと思った石塚さんも凄いし、許した編集者も凄いと思う。もっと凄いのは、石塚さんの画力だ。サックスが、ピアノが、ドラムが、トリオのその音が聴こえてくるかのようなライブシーン。
◆天才とは、世界へ出て行くミュージシャンとはこういうものだという、主人公〈大〉の描き方もいい。大ほどではないけれど、僕もかつて音楽を演っていた頃に「あぁこいつは凄い」と思った奴も、こんな人間だった。信じられないぐらいにただ真っ直ぐに自分の音楽に向かっていく。それしか、ない。それ以外は、ない。そんな人間。
◆羨ましいと思う感情を思い出した。そうそう、こういうような奴がいたから、僕は音楽を諦めたんだ。僕には無理だって。とても、そんなに真っ直ぐに進んでいけないって。まぁ端から進んでいける技量も才能もなかったんだけど、それに気づかされたから。
◆もしも音楽好きなら、JAZZが好きならお勧めする。『BIUE GIANT』は全10巻。そして主人公〈大〉が一人で海外へ立ち向かう新章として『BLUE GIANT SUPREME』が始まっている。
◆楽器のテクニックも作曲のセンスもなかったんだけど、作詞だけは自信あったんだよね。あの頃は。今読むとけっこうひどいものもたくさんあるんだけど(^_^;)。その中に「あぁ、ここに俺がいるな」ってつい苦笑いしてしまう歌詞もある。今の小説に繋がるような言葉選びに、歌詞の向こうにある物語。やっぱり昔っから物語が好きだったんだ僕は。

映画『家族はつらいよ2』のノベライズです2017年03月12日

◆晴れ。少し気温が低いかな。
◆山田洋次監督作品『家族はつらいよ2』が今年の5月に公開されます。前作と同様に今回もノベライズを頼まれまして、書きました。俳優陣はまったく同じで、橋爪功さん、吉行和子さん、西村雅彦さん、夏川結衣さん、中嶋朋子さん、林家正蔵さん、妻夫木聡さん、蒼井優さんと豪華ですよね。山田監督が愛して止まない〈喜劇〉です。
◆さて、ノベライズというのは、基本的には〈映画作品の小説化〉です。映画をそっくりそのまま小説にするのです。脚本があるから楽じゃね? とお思いになる向きもございますでしょうが、実は楽です(あくまでも僕の場合は、ですが)。何せストーリーを考えなくてもいいんですからね(^_^;)。
◆ただし、実際の執筆はそんなに簡単でもないです。脚本には基本、役者の台詞とト書きしかありません。ということは、小説のおそらく半分から三分の二を占めるであろう地の文は全部小説家が書かなきゃならないのです。しかも、映画のストーリー進行をそっくりそのまま小説にしても、読者に伝わらないことも映画の場合は多々あるのです。映像で見れば納得できることも、文章では無理じゃんってこともあるのですよね。なので、ノベライズする際には何を足して何を引くか、が重要になってきます。しかもこの作品は〈喜劇〉ですので、映像ではおもしろくても文章にするとまったくおもしろくない(監督すみません)場面なんかも出てきてしまうのです(^_^;)。
◆幸いにして今作も「小路先生の自由に書いてください」と山田監督も松竹さんも仰ってくださったので、映画にはないシーンも多くあります。特にオープニングとラストは(前作もそうなのですが)まったく新たに書いてます(小説としての作品世界を保つためですね)。これは入れてもおもしろさが伝わらないと削ってしまったシーンもあります。まぁ基本的にはシナリオに沿って書きますのでそんな自由にはできないのですが(^_^;)、映画を補填する形で小説化できたのではないかと思います。できれば、小説を読み、5月公開の映画も観て、比べて楽しんでいただけると嬉しいです。
◆一応〈著 小路幸也〉となりますが、正確には僕の作品じゃないよなぁ、といつも思います。山田洋次監督が描いた絵に、僕が小説という額装をしたようなものです。あるいは山田監督が焼いたステーキを、僕は皿に盛りつけしただけ。そんな風に思っていただければと。

36年間のマグカップ2017年03月09日

◆晴れたり曇ったり。穏やかな天候。
◆腰はかなり回復したけれども、まだかがんで顔を洗えない状態。あと二、三日もすると違和感を感じながらも普通に動けるようにはなると思うんだけど。本当に腰をやってしまうとどんなに〈腰〉が大切かということを実感する。腰が決まらんと何もできないというのは何事にも通じるのだ。
◆インスタグラムも一応登録してあるんだけど何せ出歩かないので写真を撮る機会もないしほとんど投稿していない。さっき、風呂上がりにいつもコーヒーを飲んでいるマグカップを写して投稿してみた。
◆これは、36年前、19歳になった年に実家を出て一人暮らしを始めたときに買ったマグカップだ。店の名前は覚えていないけど、確かその頃流行り出した生活雑貨を売るオシャレなお店で買った記憶がある。何ヶ所か欠けてしまっているけど、今も使い続けている。特に大事に使っているわけじゃないんだけどそもそもが乱暴者じゃないから(^_^;)、わりと物持ちがいいのだ。
◆そのときにマグカップは三個買ったはずだ。ひとつは確か結婚した当時に割れてしまって捨てたのを覚えているけど、もう一個を買ってすぐの頃に誰かにあげた記憶がある。女の子だったはずなんだけど、それが誰だったかを覚えていない。同じアパートに住んでいたOLさんだったか、あるいは近所の馴染みの居酒屋の常連さんだったか、それとも同じ予備校に通っていた女の子だったか。とにかく、その女性が部屋に遊びに来てコーヒーを落としてあげて(当時はサイフォンで落としていた)、「このカップで飲むとすごくコーヒーが美味しく感じる」としきりに言うのであげたのだ。それは当時から喫茶店でバイトしていた僕の腕がいいからじゃないかと思ったのだけど、確かにこのマグカップ、少し厚手ですごく口当たりがいい。もう36年間使っているわけだけど、きっと割れるまで、もしくは僕が死ぬまで使い続けるだろう。
◆誰か思い出せないけど、同じマグカップを持って帰った彼女は元気だろうか。申し訳ないけど、そのアパートを引っ越して以来会っていないので、顔もおぼろげになってしまっている。
◆そういう思い出を、切り張りしたり膨らませたり磨いたりして、僕は物語を書いている。

また腰をやってしまったので2017年03月05日

◆晴れたり曇ったり。
◆また腰をやってしまった。東京の定宿のホテルについてバッグを持ち上げようとしたときだ。バランスを崩して「あ!」という感じで腰を痛めたのがわかった。ただ、そのときは「やべぇ一歩手前だった」という感じで、その後は注意しながら普通に動いていた。取材も兼ねて、あちこちかなりの距離を歩いても何ともなかったのだ。このまま治ってくれるかと思ったけど甘かったね。
◆家に帰ってきてやれやれと普通に過ごしていたのだけど、お風呂に入った後に急激に痛みがやってきた。「あぁ来てしまった」という感じだ。座っていると固まってしまってそして動くときに痛みが走ってまともに動けなくなる。ちょっとした動きで激痛が走る。もうじっとしているしかないけど、じっとしていても動けなくなる。経験上、これはもうどうしようもない。薬を飲んで大人しく自然治癒を待つしかないのだ。
◆普段からストレッチをしたり、ウォーキングをしたりしてそれなりに身体に気を遣ってはいるんだけど、やってしまうんだね。本当にどうしようもない。いいわけですが、原稿を書くのもツライです。少し遅れると思います。
◆当然のように、せっかく届いた〈Nintendo Switch〉もそして〈ゼルダの伝説〉もまだパッケージすら開けていない。何たってちょっとした動きで激痛が走るのだから、ゲームなんかやった日にはどうなるかわかりませんよね。しばらくの間は自粛します。
◆治ったら、もう少し腰回りの筋肉を強化しよう。腰痛にならないようにするにはそれしかないって話だからね。
◆ありがたいことに五十数年の人生で入院というものをしたことがない。大きな怪我もなければ病気もしたことないのだ。会社員の頃の健康診断でも常に全ての値が正常値だった。煙草のみだけど肺もきれいだと太鼓判も捺してもらった。丈夫な身体に産んでくれた両親に感謝する。

ゴロワーズを吸ったことあるのはかまやつさんが歌ったからだ2017年03月02日

◆東京は雨が降っていた。
◆『ラブ・ミー・テンダー 東京バンドワゴン』のインタビューのために集英社さんにお邪魔した。このインタビューももう何年も同じ時期にほぼ同じメンバーでやっているので「あーどうもどうもー」って感じなのだ(老婆心ながら、それ以外の仕事や用事はないです)。
◆朝、妻に起こされてキッチンに向かうと「かまやつひろしさんが亡くなったって」と聞かされた。「えっ」と声を出し、少しの間そのまま考えてしまった。ご病気だとは聞いていたし、お年もお年なので大丈夫だろうか、もう少し元気な姿を見せてほしいと思っていたのだけど、叶わなかったみたいだ。
◆最初はもちろんザ・スパイダースだ。その頃はまだ僕は小学生で音楽的な云々などはまったく知らなかった。中学生になって初めてスパイダースの「いつまでもどこまでも」「バン・バン・バン」「ノー・ノー・ボーイ」「フリフリ」などの名曲の数々はかまやつさんの作品であり、音楽的なリーダーだったことを知った。そして、『我が良き友よ』に『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』だ。この二曲に、やられてしまった。かまやつさんとはこんなにも凄いセンスを持ったシンガーであり、ミュージシャンだったのかと思い知った。高校生になって煙草を吸い始めたとき、真っ先に試してみたのは〈ゴロワーズ〉だった。思えば高校生がデパートの煙草売り場で普通に洋モクを買えたのだからのどかな時代だった。
◆かまやつさんはその風貌とともに飄々とした独特の個性とスタンスでずっと僕が影響を受けたミュージシャンの皆さんの後ろにいた。まるで、いつもはどこにいるかわからないのに、ふいに笑顔で現われて楽しませてくれる〈ちょっと変わった親戚のおじさん〉みたいにだ。かまやつさんが呼ばれて脇からステージにひょいと現れると、皆が大喜びして笑顔と拍手喝采で迎えた。今も、その内に誰かのステージにひょいと現れて笑顔であの歌声を聴かせてくれるような気がする。
◆ありがとうございました。向こうで、もしも会えたときには、「全然知らないけどけっこういい小説を書いていた人なんだねぇ」と笑顔で肩を叩いてもらえるように頑張ります。

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