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2014年9月3日(水) スターダストパレード
◆晴れ。爽やかな天気。stardust
◆ずっと気持ちの良い天候が続く我が家近辺。夏が少し戻ってきたような陽射しなんだけど、朝夕は涼しい。そして夜になるともう秋の虫たちが元気よく鳴いている。あまりにもたくさん鳴いているのでうるさいぐらいだ。北海道は駆け足で秋に向かっている。そして北海道の秋は本当にあっという間に終わってしまうんだ。
◆春夏秋冬、どの季節も好きなんだけど、どちらかといえばアウターを着られる春秋冬がいいかな。北海道の冬は厳しいけれど、今年はどんな服を着ようかと考えるのは楽しい。
◆さて、そんな日に新刊見本が届きました。『スターダストパレード』(講談社)です。僕は講談社〈メフィスト賞〉出身でして、そのホームグラウンドとでも言うべき文芸誌が〈メフィスト〉です。デビューして10年が過ぎているのですが、初めてその〈メフィスト〉で連載したのがこの作品です。
◆担当編集からその〈メフィスト〉の性格上「ミステリもしくはそれに類するもの」というオーダーがあり、ふと思いついたのが〈小さな子供を乗せて逃げる若者〉というアイデアでした。そこから話をふくらませて書き上げたのがこの物語です。
◆時代は少し前、1980年代です。刑務所から出てきた元暴走族のヘッドである〈マモル〉は、彼を刑務所にぶちこんだ刑事の〈鷹原〉の出迎えを受けます。鷹原はマモルにとっては恩人であり、父とも兄とも慕った男。その彼が〈ニノン〉というフランス人とのハーフの女の子を連れていました。鷹原がマモルに言ったのは「この子を連れて、遠いところへ逃げてくれ」という台詞でした。そこから、言葉を失った五歳の少女ニノンを連れたマモルの、ある目的地への旅が始まります。何が起こったのか、逃げた先でどうすればいいのか。鷹原とマモルの間に横たわる過去、ニノンを巡る大人たちの企み、すべてを乗せて車は走っていきます。
◆あるシーンや設定などは、大好きないくつかの映画へのオマージュめいたものにもなっているのですが、それが何かは興をそぐので言わないでおきます。星屑のようなささやかな光を抱えた者たちの物語。楽しんでいただけたら嬉しいです。

9月5日(金) 日々
◆晴れたり曇ったり。suzukitunekichiame
◆さわやかな天気が続いて陽射しは少し夏の香りがしたけれど、明らかに風も空気も秋の匂いになってきている。庭の桜の葉もどんどん紅葉して散ってきている。秋の始まりだというのに、北国の人はもう冬のことを考え始めてしまう。今年の冬は雪が少ないといいなぁと毎年思うのだ。でもまぁ少なすぎても困るのだけどね。
◆アギーレ監督の元、新生サッカー日本代表は札幌で初陣。2−0で負け。まぁウルグアイはほとんどワールドカップメンバーだし負けるのも当然と思っていた。さっそく布陣を変更し、初代表のメンバーを持ってきたのは嬉しくて前半は愉しめたけど、後半は見るものがなかった。どうせなら後半のっけからバンバンメンバーを変えて欲しかったのだけどね。とりあえず9日にもう一戦ある。それを見て、監督の意図などもう少し読み取りたい。
◆写真は鈴木常吉さんのニューシングル『雨』。〈深夜食堂〉も始まるね。オープニングは引き続き鈴木常吉さんの歌声が流れるあのままでいてほしい。
◆面倒くさい人、話し言葉にすると「メンドくせぇ男(女)だな!」となるのだけど、そう感じる人が周りにいるだろうか。テレビタレントなども便利でよく使って「そうそういるいる!」と共感している人も多いだろうか。でも、これはとても危険な言葉だと思う。面倒くさい、で済ませてしまっては駄目な場合が多いような気がするのだ。面倒くさい、と、感じるのではなく、きちんと対応しよう、と感じるようでなければいろんなものがダメになっていく気がする。自戒を込めて。

9月7日(日) 日々
◆晴れ。陽射しは強いけど風は秋。namonakiotoko2
◆著作が単行本で54冊になった。文庫などを入れれば100冊は越えた。いつの間にかそんな数になってしまった。いつの間になどと言ってるけれどこれも全部読者の皆さんと書店員さんと編集者さんのおかげだ。本当に感謝してる。とは言いながら小路幸也はけっこう雑な作家だ。わりと何でも書くけどパターンは一緒。我ながら何とかならないものかと思って毎回真剣に考えて書いているんだけどどうにもならないのが悔しい。
◆作家なんて自分の人生を切り売りしているようなもの、というのは当たっている一面もあって、今まで書いた54冊の中には自分の経験を参考にして書いたエピソードがかなりある。まぁいくら何でもそのまま書いてしまうのは拙いし僕も救われないのでおおむねカッコつけて書いているんだけど(^_^;)。
◆でも、まだ自分の経験の中で書いていないことが多くある。それは女にだらしない、ろくでもない男の物語だ。主に女性とのエピソードだからそれを中心に書くと恋愛ものもしくは性愛ものになってしまうし、何十年も前の出来事とは言えそのまま書いてしまうとさしさわりが山ほどあるだろうから書けない。
◆僕の作品の感想をネットなどで拝見すると、〈悪い人が出てこない〉とか〈優しい人ばかり〉というのがよく出てくる。それを欠点だとする人もいるし長所と言う人もいる。意識してそうしているわけじゃなくて、書いていくと自然にそうなってしまう。それはとりもなおさず僕の人生を彩ってくれた人は、みんな優しい人ばかりだったからじゃないかと思う。こんなろくでなしでだらしない男なのに、本当にみんな優しくしてくれた。アパートの大家さんも居酒屋の店長も喫茶店のマスターも予備校の先生も、別れてしまった女性たちも昔からの友人も会社の上司も同僚たちも。その人たちの影を、物語の中で浮かび上がらせることも、表現する手段を得た僕のすべきことじゃないかとも思う。そう思って書いてる。

9月12日(金) 日々。断水。
◆晴れたりゲリラ豪雨だったりまだ不安定な北海道。chocora
◆長年札幌市及びその近郊の江別市に住んでいるけれど、初めての事態。大雨による河川増水で避難勧告やさらには断水。今現在も住んでいる江別市では断水が続いている。
◆大雨なのに断水とはこれいかに? というのは、川が濁りすぎて浄水場での浄水機能に限界が来たらしい。さらには泥水の影響で泥が溜まりそれを排除しなくてはならなくなったらしい。つまり全ては想定外の大雨のせいというわけだ。50数年の人生で何時間かの断水は何度も経験しているけれど、丸二日近くもの断水は初めての経験だ。不自由といえば風呂に入れないのとトイレの排水だが、幸いお風呂の残り湯もたくさんあった。飲み水は給水車の活動で何とかなる。食事は適当に済ませればいい。各方面職員の皆さんはもちろん復旧に向けて最大限の努力をしている。自衛隊も給水車を出している。市民の僕たちは協力し合い最大限の節約をして復旧を待つ。二、三日風呂に入らんでも死にゃあせん(温泉行ってきたけどな)。
◆こういうときにやたら文句を言いたがる連中がいる。ツイッターなどで散見する。この程度のことで文句を言うなバカ者。天災だからしょうがないんだ。
◆あのニュースになった盲目の人への攻撃をしているやつらもいる。しかもやつらは嬉々として偉そうにツイッターなどで自分が正しいと呟いている。バカか。(いや違った)バカだ。世の中にはバカが大勢いる。むしろバカの方が多いぐらいだ。正しい人たちはあのバカたちと同じ土俵に立ってはいけない。バカにルールを説いても理解できない。喜んで反撃してくるだけだ。何もするな。ただ冷静な眼で見つめろ。子供がいるなら自分の子は決してこんな人間には育てないと決意を新たにしてほしい。
◆バカは死ななきゃ治らない。

9月18日(木) 日々
◆豪雨が来たり晴れたり。crusasers
◆不安定な天気が続く北海道。そして気温もめっきり低くなってもう窓を全開することもできなくなってしまった。さらに締切りが重なり過ぎて各方面にご迷惑をかけてしまっている。本当に申し訳ないと思っている。まだデビューして11年目だけど、明らかにデビューの頃より〈執筆体力〉が落ちていると実感する。あの頃なら一時間保てた集中力が今は五分と持たない(それは大げさ)。まぁその分〈執筆テクニック〉はついているから何とかなっているようなものだけど。あれだね、野球選手やサッカー選手の若手とベテランみたいなもんだね。しょうがないとはいえ、いかんなぁと思う。何とかしないと。
◆写真は〈クルセイダーズ〉の『スタンディング・トール』。
◆スコットランドの独立問題でイギリスが揺れている。映画や小説や音楽で幼い頃からイギリスに親しみを持ってきた人間としてはものすごく気になるところだ。実際、結果如何では世界中にいろんな意味で、場面で、大きな影響を与えるんじゃないか。もちろん日本も対岸の火事ではない。どうなるのだろう。
◆国と人種の問題は、人類が存在する間ずっとそこに横たわる問題なんだろう。比較的単一民族でずっと過ごしてきた日本に比べて、ヨーロッパのそれは根深い。日本人である僕らには想像もつかない程に。
◆過去の遺恨を未来に持ち越したところでそれは何も生み出さない。それは歴史が証明していると思う。人間社会は互いに生き続けるだけで誰かを傷つけ傷つき合うようになっている。だから、許し合う事を覚えないと、考えないと未来はない。許し合って人類は今まで繁栄してきた。互いに憎み合うだけならとっくに人類は滅亡している。
◆要は『LOVEだねぇ』ってことだ。

9月23日(火) 日々
◆晴れ。穏やかな日。lastvegas
◆相変わらずこのままではついに締切りを守れなくて休載するのではないかというぐらい追いまくられている。いやそれも全てが自分のせいなんだけど。 ここの日記も日々の記録のために何でもない事をあれこれ書いていきたいのだが、なかなか更新もできない。53歳にもなるいい年したおっさんが情けない。仕事はきちんとしろ。
◆そうは言いながら、僕は執筆を、作家活動を仕事とは捉えていない。僕にとって仕事というのは文字通り誰かの元で一生懸命に自分の作業をするのが仕事だ。14年間勤めてきた前職の広告制作会社で僕は〈仕事〉をしてきた。それに疑問を持って耐え切れなくて仕事を辞めて、仕事ではない、自分の作品を書いて生きていこうと決めて今に至っているので、僕は今、仕事はしていない。ただ、作品を書いてそれを売って生きている。
◆なので、実は多少申し訳ない気持ちをいつも抱いている。こんな作品でこんなに原稿料や印税を貰っていいんだろうかと。ありがたくてしょうがないので、せめて関わった人たちに喜んでもらえるように頑張っているつもりではある。頼まれれば何でもやる。依頼は基本的には断らない。まぁいい大人としてはただ頑張っているだけではダメなんだけどね。結果を出さないと。それでも、頑張らないよりは頑張った方がいい。
◆近頃は忙しすぎて体調が悪くなることもあるんだけど、何せ書くことが楽しくて仕方ないんだ。こんなに楽しんでいるんだから、ここで、机の前でキーボードに指を置きながら死んでも本望ってもんだ。むしろそんな風に死にたいよ。
◆書くよ。

9月26日(金) 日々
◆晴れ。穏やかな日。triplain
◆相変わらず締切りに追われている。仲良しの札幌出身の4人組バンド〈TRIPLANE〉のボーカルの兵衛くんとギターのケインくんが、道内ツアーの途中の息抜きに家にお茶しに寄ってくれた。久しぶりの再会なので嬉しかった。
◆彼らと僕との年齢差はおおよそ20歳。出会いは偶然だった、というかそのときのプロデューサーが僕の本を読んでいてくれて何かで一緒出来ないとということで会って、お互いに親交を深めたのだけど、実は意外と共通点が多かった。もちろん音楽と小説の違いはあるけれど、お互いにメジャーを舞台に創作活動をしている(彼らは泣く子も黙る大手レーベル所属だ)(おこがましいけど僕も一応メジャーの舞台に立つ作家だ)。そしてお互いにプロとしてデビューしてちょうど10年が過ぎた。さらにはもちろん北海道出身だ。地方から出ていって東京で勝負をするいろんなものを共通して抱えている。そして(これはスタッフに怒られるかもしれないけど)お互いに〈誰もが知る〉という存在にはまだなっていない。
◆あれこれと話をした。創作をし続けるということ、自分の作品でお金を稼ぎ続けるということ、10年が経ってもう新人ではない自分たちの今後のこと。何よりもどうやって〈アーティスト〉としての自分を高めていけるのかということ。
◆アーティストにとって、クリエイターにとって、全てが永遠の課題だ。答えなど出ない。出ない中で走り続けるのか、立ち止まるのか、どうするのかを選び続けなきゃならない。そんな尽きない話をした。
◆創造者の全てが〈誰もが知る存在〉を目指さなきゃならない、ということは、ない。でも、プロとして存在し続けようと思うのなら、そこを見つめていないと嘘になってしまう。嫌らしい表現になるけど〈売れて稼げる〉ようにならなきゃその場所にい続けることはできない。わかりやすく言えば〈トライプレイン〉はサザンオールスターズのような存在を目指さなきゃならないし、僕は東野圭吾さんより本が売れるようにならなきゃならない。でも、創作の本質はそんなところには、ない(はずだ)。これが大きなジレンマなんだ。
◆でも、お互いに今は自分の好きなことをやって生きている。その幸せを噛みしめて、さらなる高みをお互いに獲得しようと話していた。がんばろう。