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2013年1月1日(火) 明けましておめでとうございます
◆晴れたり曇ったり。shawshanks
◆2013年が始まったとはいっても生活は地続きなわけでしかも帰省がなくなり自宅にいるので食事が雑煮やおせちになっただけで変わらず朝から仕事をしています。皆様、新年をいかがお過ごしでしょうか。
◆今年もお陰様で出版予定がいろいろあります。わかっているだけをご紹介しますと、まず2月に『蜂蜜秘密』(文藝春秋)です。〈別冊文藝春秋〉で連載していた秘密の蜂蜜をめぐるファンタジーです。それから4月には『フロム・ミー・トゥ・ユー 東亰バンドワゴン』(集英社)、今回は番外編です。サチではなく、堀田家やその周辺の皆の語りで、それぞれのエピソードが語られます。ちょっとだけファンの方にサービスしますと今まで一度も登場していないけど一作目からずっと堀田家で語られているあの女性も登場します。その他はまだ発売日未定ですが、『娘の結婚』(祥伝社)『オールディーズ・ロマンス』(小学館)は確実かと思います。その他にも幻冬舎さんから壮大な物語の序章をお届けできると思います。他にもいろいろ書いてますのでひょっとした今年中にもう数冊出るかもしれません。あ、ザンティピーは書くのかなぁ(^_^;)。
◆新連載もいろいろ始まります。『ビタースイートワルツ』(実業之日本社)、『札幌アンダーソング』(角川書店)『スタンダップダブル! 甲子園ステージ』(角川春樹事務所)タイトル未定ですが早川書房さんでハードボイルドミステリーを、筑摩書房さんでは子供が主人公の冒険ものが始まる予定です。どうぞよろしくお願いします。
◆何度も書いていますが、さして売れてもいない作家にたくさん依頼をいただいて感謝しています。会社員の頃に、〈自分の給料の二倍の利益をあげないとそれは会社にとっては赤字の社員だ〉と聞きました。作家だってそうです。出版社に利益をもたらすのがプロの作家だと思っています。もちろん、いい作品を書くのはあたりまえとして。今年もがんばります。
◆それ以外の部分では、そうだなぁ相変わらず運動不足なのでそこは今年こそきちんとしよう。それからデビュー10周年なので、何かしたいなぁと考えています(考えるだけで終わりそうな予感ヽ( ´ー`)ノ)。
◆はっ、そうだ今年は結婚25年。銀婚式じゃないか! 覚えておかなきゃ。

1月3日(木) 日々
◆晴れたり曇ったり。moritaka
◆結婚以来24年目にして初めて自宅で過ごす正月。とはいえ、何かが違うわけでもなく、いつも通りに執筆中心に日々が流れていく。実は息子に続いて妻もノロウィルスにやられたみたいで食事の支度をしているんだけど、それもまぁ妻が具合悪いときにはいつもしていることだし。
◆正月番組も特に観ているわけでもない。唯一観たのは息子たちと一緒に年末のダウンタウンの笑ってはいけないぐらいか(あ、紅白も少し観た)。サッカーも観ているけどそれはいつものことだしね。
◆以前だったらお正月はお年玉を握りしめる息子を連れておもちゃ屋さんに走っていたんだけど、それもなくなって数年経つ。前にも書いたけど、お正月はお店も休んだ方がいいと思うんだ。コンビニがあたりまえのようになってしまった今は無理なのかもしれないけど、僕らが小さい頃は本気でお正月三が日はどこもお店は開いていなくてそれでも不自由はなかったと思うんだけど。
◆劇的に社会が変わることはそれこそ革命に近いことでも起きないと無理だろう。僕らはそれを目の当たりにはしたけれども(ソ連とかベルリンの壁崩壊とか)この日本でそれに近いことは起こり得るだろうか。たぶん、ない。あるとしたらあの戦争を起こしたときのような状態になることだろうけど、この情報化社会には99%ないと思う。ただ、何らかのブレイクスルーが起きたのなら、それにつれて社会も大きく変動するかもしれない。古い言葉で言えば技術革新か。
◆いずれにしても、僕らは毎日をきちんと生きていくしかないんじゃないだろうか。そして毎日を人として正しくきちんと生きる人が多くなればなるほど、少しずつ世の中は生きやすくなっていくんじゃないか。

1月4日(金) 日々
◆大雪。lesmiserabless
◆猛吹雪。そしてわずか4、5時間ほどの間に50センチぐらいの積雪。年に一、二度こういう大雪があるとはいえ、雪かきは疲れる。正月で息子たちが二人とも家にいたので良かったけどさ。こういうときには息子がいていいねぇ(^_^;)。
◆何か目標でも立てようかなぁと思うけど、何せろくでなしなもので続かないんだよね。趣味を持とうというのはもう十年ぐらい言い続けているけどいっこうに趣味ができないし(^_^;)。何かないかなぁ。
◆でも、老後の楽しみに取っておいた〈時代小説を読む〉ってのはそろそろ解禁にしてもいいかなぁと。池波正太郎さん、柴田錬三郎さん、藤沢周平さん、岡本綺堂さんなどなどなど。もちろん少しずつ読んではいるけど余りのおもしろさに今読んではいけないとかれこれ20年間以上ずっと我慢していたのだ(いや他に読むものがたくさんあったせいもあるけど(^_^;))。まずは大人買いで『鬼平犯科帳』から全部一気に揃えるか。本棚には何冊かあるんだけど何巻があるのかを確かめるのも時間が掛かるしな。しかし問題は本棚の許容量が限界だってことだ。そこも今年こそなんとかしようかなぁ。
◆いつか時代小説も書いてみたいしなぁ。写真は映画〈レ・ミゼラブル〉サントラ盤。

1月6日(日) 日々
◆またしても吹雪。まぁさほどひどくはならなかったけど。ookamikodomo
◆若い頃の悔いなんざぁ数限りなくあるもんで。作家になった今とはなってはそれはもう財産みたいなもの。自分の人生を切り売りしてるような商売なんだからあれやこれや思い出すのに時間を費やすこともある。中には思い出したくもない事もあるのだけど、それもこれもひっくるめて人生。書けるものなら何でも書くつもりではある。
◆今まで書いた作品の中にも実は自分の体験したエピソードが形を変えていることもある。そこに登場した人は今も付き合いのある人もいるし、まったく疎遠になってしまった人もいる。勝手に書いて申し訳ないなと思う反面、お元気ですか? 僕は忘れてないですよという思いを込めたので勘弁してねとも考える。本当に小説家なんてわがままな人種だ。
◆インタビューなどで創作の根源などを訊かれることも多いので、さて今の自分を作ったのはなんだろう? と振り返ることも多い。音楽や広告やらいろいろ語ってきたけど、あまりしゃべっていないのは〈ひとり遊び〉かな。よく居間で一人で遊んでいたのを覚えている。たぶん幼稚園ぐらいの記憶だ。姉二人は小学校に行っていたので昼間や夕方に一人でいることが多かったんだろう。よく人形遊びをしていた。今で言うフィギュアをたくさん並べて自分でストーリーを作ってその人形たちでドラマを演じさせていた。もちろん内容は戦いごっこが多かったと思うけど。母に呼ばれるまで、誰かが帰ってくるまで、夕暮れの光が消えて部屋が薄暗くなるまで、延々と一人で遊んでいた。その記憶ははっきりとある。そしてとても幸せな記憶になっている。写真はアニメ映画『おおかみこどもの雨と雪』

1月8日(火) 日々
◆晴れ。久しぶりにおだやかな天気。romanholiday
◆唐突だがやはり人生に恋は必要だと思うんだ。我南人じゃないけど「LOVEだねぇ」ってもんだ。無理にするもんじゃないけど、胸の内に恋の炎を抱え込んでいる方がアドレナリンも出るだろうしホルモンの活動も活発になるだろうし体調も良くなるんじゃないか(^_^;)。そもそも人間ってのは見栄えに気を遣った方がいろいろと調子が良くなるもんなんだよ。恋さえすればその人に良く見てもらいたいって思うからね。健康維持や体形維持に精を出して、規則正しい生活にもなるってもんだ。
◆まぁ問題は、若い連中はともかくとして、年取ってからは粋な恋ってやつができないと拙いってことだぁねぇ。野暮なことをしてしまうとすぐに犯罪に直結してしまうご時世だからね。
◆やっぱり、恋の仕方も勉強した方がいい。小説とか漫画とか映画とかに名作は数多い。やたら暗かったりエロすぎたりビョーキだったりバカだったりする恋愛ものも昨今は多いけど、恰好良い、お洒落な、粋な恋愛ものを観ようよ。写真は永遠の世界の恋人オードリー・ヘップバーン『ローマの休日』
◆どうやらコンサドーレ札幌の陣容はほぼ固まったようだ。重要な選手が抜けてはしまったが、巧いベテランが何人か残ってくれたし何より若い力が大勢いる。監督も社長もOBというJ初の試みで、今年を実りある一年にしてほしい。
◆新しい年が始まっている。毎日をきちんと生きよう。そして今年も恋をしようヽ( ´ー`)ノ

1月9日(水) 日々
◆晴れ。今日も雪かきをしなくて済んだ。sawadakenjidx
◆テレビで昭和の歌姫をやっていてちあきなおみさんも特集していたのでつい観てしまった。ミュージシャンを目指していたのは何度も言ってるけど、高校生の頃は特に歌謡曲をバカにしていた(まぁ主にアイドルをバカにしていたんだろうけど)。そもそも自分のポップスの根っこはその辺にあったのだけど、若さ故それには気づかず、ロックやシンガーソングライターがカッコいいと思っていた。そんなある日、詳細は覚えていないけど、何かのライブで対バンするバンドがいて、一緒にリハをやっていた(どっかの学園祭かなんかだと思う)。彼らはものすごくポップなバンドで、いきなり沢田研二とかをやりだしたのだ。なんだあいつら? とか思っていたのだけど、それがものすごくカッコよかった。彼らの演奏技術もアレンジも群を抜いていて巧く、「なんでこんなすげえ奴らがジュリーなんかを?」と思ったのをよく覚えている。大げさに言うと目から鱗状態で、そうか歌謡曲にもいい曲があるんだ、とその時に初めて思い至った次第。
◆それから改めて観るとまぁジュリーのカッコいいこと(^_^;)。しかも、自分が初めてレコードプレーヤーで聴いたシングルレコードが、姉が買ってきたジュリーこと沢田研二さんのソロデビュー曲『君をのせて』だったということにも気づいた。自分の音楽好きの原点はまだ物心つくかつかないかの内からテレビで観ていた歌謡曲に、日本のポップスにあったんだなぁと、高校生の小路くんは深い反省とともに心に刻み込んだのですよ。写真はもう永久保存版の『沢田研二 夜のヒットスタジオ』

1月13日(日) 日々
◆吹雪。また雪かきの日々。odorufinal
◆またしても怒濤の締切り連続で更新できなかった。そして今も絶賛自宅自主カンヅメ状態。どこにも出掛けていない。そろそろ煙草を買いにいかないとマズイ。何よりも観たいDVDもやりたいゲームも読みたい本もどんどん溜って行く「俺、この原稿終わったら映画行くんだ……」とフラグ立つ台詞を何度夜中に呟いたことか。そしてフラグが立つ言葉は誰かが聞いてくれないとフラグ立たない(当たり前)。
◆今のところの予定ではこの状態が2月いっぱいは続きそうな雰囲気だ。しかしこれは本当にありがたいことなのだ。この不況時に新年早々ずーーーーっと締切りに追われているなんてなんて素敵なんだ。
◆気づけば世間は連休になっていて、成人式も行われる時期じゃないか。20歳のときはフラフラしていた。一応学生という身分はあったけど学校にも行かずにバイトとライブに明け暮れていた。確か故郷の旭川に帰って成人式には出たはずなんだけど、ほとんど何も覚えてないなー。親不孝な息子だったと思う。
◆大人になるってことは、責任を自分で背負うこと。そう気づいたのはいつだったのか。それも覚えていないけど、確かなのは他人とのかかわりの中でしか、それは気づけないもの。だから、街に出た方がいい。自分にできることは何でもやった方がいい。若いうちの苦労は買ってでもしろって言葉があるけど、それは本当だ。真実だ。いつかその若いうちの苦労が、失敗が、何もかも人生の財産になる。成人おめでとう。写真は『躍る大捜査線THE FINAL 新たなる希望』。どんな時代にだって、希望は、ある。

1月14日(月) 日々
◆晴れたり曇ったり。雪は降らなかったよ。shipingsuntra
◆鞄が大好きというのはここで何度も言っている。理想の鞄というものを常に考えているのだけど、なかなか明確なイメージが浮かんでこない。まぁデザイナーとしての才能はないことは広告屋時代に嫌というほど思い知ったので〈理想の鞄〉の形が明確に浮かんでこないのも当然なのだが。だがしかし理想が高すぎるのも事実なのだ。思い描いているのは〈いついかなるときでもどんな用途にもピッタリの鞄〉なのだ。はっきり言ってそんなの無理。鞄は用途によって、TPOで使い分けるべきなのだ。しかし生来の貧乏性なのでひとつ物を気に入って買ったらそれだけを使い続けたいのだ。だが現実には気に入って買っても用途によっては帯に短したすきに長しということになってしまうのだ。オーダーメイドで鞄を作ってくれるところもたくさんあるからその気になれば相当に好みの鞄は作れるだろうが、やはり〈どんな時でもオールオッケー!〉の鞄の形を思い浮かべることは難しい。
◆〈軽くて、どんな服装にも合って、物を出し入れしやすくて、夏でも冬でも(吹雪でも)大丈夫で、洒落ていて、伝統的でそれでいて革新的なスタイルの鞄〉。基本はショルダーと手提げの2WAYになると思うのだがそこも何か工夫したい。誰かここを見た鞄職人さん、一緒に作ってくれないだろうか。写真は映画〈シッピングニュース〉のサントラ盤。

1月19日(土) 日々
◆雪。jinsei
◆まぁしかしよく降るわ降るわ。何が降るんだってそりゃ雪が。毎年のことながらよくこんな土地に住んでいるなと我ながら思う道民。だからといって絶対に雪の降らない地方に住みたいという強い気持ちも湧いてこないのが不思議。人間って慣れる動物だからな。
◆締切りに追われる毎日の中で息子が今度はインフルエンザに罹ったりしてとにかくバタバタした時間が過ぎていく。締切りをずらしてもらったりして本当に申し訳ない。頑張って書きます。
◆基本的にどこでも書ける人間なんだけど、世の中の馬鹿馬鹿しいニュースなんかに気を取られてしまうと怒りで妄想が渦巻いて疲れてしまう。だからなるべく馬鹿な連中のやることには眼や耳を塞いでいるんだがそれでも入ってくる愚かな政治家たちのニュース。いっぺん殺したいよマジで。もし天涯孤独だったら絶対俺はあいつらを○○する完全計画を練るね。
◆写真はクリント・イーストウッド『人生の特等席』
◆思えばあの頃僕は特等席にいたのだな、と思うことがある。そのときには何とも思っていなかったのだけど、振り返ってみれば様々な経験をさせてもらっていた時期。経験は、それは楽しいものでも苦しいものでも、過ぎてしまえば全部自分の宝物になる。そうして、その頃を振り返ればなんと贅沢な場所でいい経験をさせてもらっていたのかと思う。
◆イーストウッドのような渋いじじいになりたいね。なれればいいな。

1月20日(日) 日々
◆晴れ。穏やかな日。sokabe
◆晴れた日曜日なのでご近所の旦那さんや子供たちがみんな外に出て、積もりつもった屋根の雪下ろしやら雪掻きから。犬の散歩に出るとお互いに苦笑いでいつもの挨拶「また積もりましたねー」「まいりますよねー本当」。日常の光景。
◆僕らが小さい頃から漫画の主人公になったり、物語を掻き回して動かすのは力を持ってカッコいい不良というのがお決まりのものだった。真面目で力が弱い委員長タイプの人間はいつも脇役かカッコ悪い役柄だった。実際作家になって物語を考えると幅広い意味で〈不良〉の方が動かしやすいんだ。現実の世界でも実は声の大きい力を持った奴がデカイ顔をする。そういう人間の方が世の中を上手く渡ったりする。でも、違うんだ。真面目に一生懸命コツコツと自分の仕事をきちんとする人が、一番凄いんだ。そういう人が主人公になるべきなんだ。でも、縁の下の力持ちは決して自分たちが主人公なんて思いもしない。そういうのは他の人のすることだって思ってしまう。
◆目立つ事は決して悪い事じゃない。乱暴に、派手にやれるのが若さの特権だ。ガンガンやればいい。でも、ラフとワイルドは同じじゃない。粗暴と乱暴は違う、派手であることと下品であることは同じじゃない。地味であることの貴さ、静かであることの強さを知らないと、それは本物にならない。本物を目指せ。写真は〈曽我部恵一バンド〉

1月22日(火) 日々
◆晴れ。穏やかな日。mezonikkoku
◆あれひょっとして昨日の日記アップしてなかったのかな? 大変失礼しました。でもおかしいなぁちゃんとアップしたはずなんだけどなぁ。
◆昨年、後期だけ大学での講義を引き受けてそれが昨日で終了した。拙い講義を聞きに来てくれた学生の皆さんお疲れさまでした。専門学校の講師時代にも痛感したのですが、学生に教えるのには愛が必要です。いやマジで。学生たちの全てを受け入れてその上で教えるということをしないと駄目なんだって思っていました。今回も引き続きと頼まれたのですが、やはり片手間に出来るものではありません。
◆いろいろと課題をやってもらいましたが、やはり〈光るもの〉を持っている学生さんはいるものです。専門学校の頃にも、一クラスに一人二人は必ずいました。今回の大学の学生さんでも三人ほどいらっしゃいました。彼女たちは別に作家になろうとか思っているわけではないでしょうけど、資質は充分にあります。担当教授にそう伝えておきました。
◆物語を書くことは、少なくとも僕にとっては楽しくてしょうがないものです。作家になる前も、なってからもその楽しさに変わりはありません。指と頭さえ疲れなければいつまでも書いていたいです。もし、物語を書くことが楽しいと感じる人がいたら、どんどん書いてください。書けば書くほど、上達します。本当です(その割りにお前は下手だなという意見は華麗にスルーヽ( ´ー`)ノ)。そしてもし、自分のオリジナルの話を最初から最後まで書き上げることが出来たのなら、作家になれる可能性は充分にあると思います(もちろんなれるかどうか、そしてやっていけるかどうかは別の話)。
◆写真はアニメ〈めぞん一刻Blu-rayBOX〉。響子さんにまた会える!

1月23日(水) 常盤新平さん
◆晴れ。穏やかな天気。natsufukuwokita
◆作家で翻訳家の常盤新平さんが亡くなられた。常盤さんの作品に最初に触れたのはたぶん小学生の頃だ。レスリー・チャータリスの『怪盗セイント』を常盤さんは翻訳されていた。ただその頃は〈翻訳者〉などという知識もなく、ただただ怪盗セイントのカッコ良さに憧れた。高校生になった僕は毎日ギターを抱えて歌い、ソングライティングをしていた。憧れの地はアメリカだった。すべてのポップスやロックはアメリカから流れてくるような気がしていた。アーウィン・ショー『夏服を着た女たち』を読んだのもそんなときだ。読み始めてすぐに、「あぁこれがアメリカの空気だ」と思った。それからアーウィン・ショーの、常盤新平さんが訳したものを読み漁った。翻訳者によって作品の空気が変わると気づいたのもこの頃だ。常盤さんが書いたニューヨークやアメリカのコラム集も読み漁った。その全てから、アメリカの空気を、風を感じていた。僕のニューヨークやアメリカの知識は全部常盤さんの著作から得たと言っても過言じゃない。『アメリカの編集者たち』という著作の中で描かれたある編集者の『私が部屋に入ると周囲の人間が少しだけ楽しい気分になる。それが理想の編集者の姿だ』という言葉に感じ入った事ががあったのもよく覚えている。自分もそういう人間になりたいと思ったものだ。
◆まだデビュー前、書いた物語の多くにニューヨークを舞台にしたものがあった。それは全部常盤さんの著作から感じたものを形にしていたように思う。拙著『HEARTBEAT』『HEARTBLUE』『うたうひと』『ブロードアレイ・ミュージアム』などニューヨークを舞台にした物語は常盤さんの作品に触れていなかったら描けなかったと思う。
◆間違いなく、僕を作ってくれた創作者の一人が、常盤新平さんでした。お会いすることはついに叶いませんでした。ただただ、いくら言葉にしても足りないほどの感謝の言葉とともに、ご冥福をお祈りします。

1月26日(土) 日々
◆曇り。比較的穏やかな日。minefujikotoiu
◆高い志を持つというのはやはりとても大切なことだと思う。もちろん高さのベクトルがどこへ向くのかというのが問題にはなってくるのだけれども。たとえば〈ショッカー〉(^_^;)。彼らは世界征服という高い志を持っていたわけだ。もちろんその方法論には問題ありありで仮面ライダーによって滅ばされてしまって良かったのだが、彼らの不屈の精神と惜しまない献身というものは目を瞠るものがあったのではないか。それはやはり〈世界征服〉という野望、つまり〈高い志〉があったからこそだろう。
◆日本企業に元気がなくなってしまったのは、その〈高い志〉が無かった、もしくは失ってしまったからじゃないのか。戦前、戦後に世界に名だたる企業に成長した会社の創業者は皆その〈高い志〉を持っていたんじゃないか。
◆再び日本に、新しい日の出、ライジングサンをもたらすのは政治なんかじゃない。日本の企業だ。日本の心と高い志を持つ商売人だ。そもそも大昔からそうだったんじゃないのか。創造力あふれる製造者がいたからこそ日本は大きな国になったんじゃないのか。創造力に富み文化を解する人間がいたからこそ、日本の文化は深化したんじゃないのか。僕ら小説家だって企業があってこその商売だ。良い意味でのパトロンがいなければ文化だって育たない。写真は〈ルパン三世 峰不二子という女 サントラ盤〉。
◆卑屈になるな。胸を張れ。高い志を持て。前へ進め。実は奇麗事ってのは、大事なことばっかりなんだぜ。

1月30日(水) 日々
◆晴れたり曇ったり。穏やかな天候の日。saikyonofutari
◆給食でうっかりアレルギーのあるものを食べてしまって、小学生が亡くなるという痛ましい事件があった。こういう事件が起こる度、そして子供たちのアレルギーの話を聞く度に「いったいいつからこんな事になってしまったんだろう」と考える。もちろんきちんと統計など取って研究していらっしゃる学者さんはいるんだろうけど。少なくとも、僕が子どもの頃と、僕の息子たちを比べると一目瞭然だ。アレルギーを持つ子供たちのなんと多い事か。無論僕が子どもの頃には〈アレルギー〉という概念の薄さもあり表面化していなかったという事実はあるのだろうけど。親である僕たちの世代のせいなのかなぁという考えもある。たぶん複合要因で一概にどうとは言えないのだろうけど。
◆生きづらい世の中になってしまっているのは間違いないけれど、生きづらかったのは別に今の時代だけじゃない。かつてこの国は戦争を経験し、敗戦の時代があり、公害の時代があり(僕の子供時代だ)、受験戦争の時代もあった。誰もが楽に生きられた時代など、ない(唯一夢を見られたのはバブル時代か(^_^;))。
◆我が身の不幸を嘆いたところで、何も変わらない。黙って泣いたところで誰も助けちゃくれない。どうせ泣くのなら、周りが驚くほど大声で泣き叫べ。泣き叫ぶためにはものすごいエネルギーがいる。こんなにも自分には泣き叫ぶエネルギーがあったのかと自分で自分に驚くから。
◆自分の意志で泣き叫んだという事は、それが、小さな一歩になるはずだ。前進したという事だ。写真は映画『最強のふたり』