2012年6月1日(金) 『話虫干』 ◆晴れ。気温も高かった。 ◆6月の始まりに見本が届きました。『話虫干』(筑摩書房)です。(はなしむしぼし、と、読みます)『ちくま』に一年ほど連載したものを加筆修正しました。読書好きの方であれば「筑摩書房さんから小路幸也?」と、思うかもしれませんね。僕も執筆依頼があったときにそう思いました(^_^;)。どんな話にしようかと担当編集さんと話し合ったときに、ふと『リライブ』(新潮社)に書いた『輝子の恋』を思い出しました。夏目漱石の『こゝろ』に材を取って展開した短編です。あの世界が思いの他楽しかったので、もう一度やってみたいと考えました。そもそも夏目漱石は心の師と仰ぐ文豪です。数ある名作の中でも『こゝろ』がいちばん好きな作品です。まったくもって傲岸不遜傍若無人僭越甚だしいのは承知の上で、『こゝろ』の世界で遊んでみたいと考えた物語です。古典籍の物語に入り込んでそれを勝手に作り替えてしまう〈話虫〉というものが存在して、馬場横町市立図書館の司書は代々その〈話虫〉を〈干し〉て物語を元に戻す仕事をやっているのです。新人司書として配属された糸井馨もさっそくその〈話虫干〉を……という物語。なんでそんな人物を登場させるんだと怒られてしまような人も登場します。個人的にはかなり愉しんで書いたのですが、こうして一冊になるとなんだかとっちらかった話になってしまったなぁと思いますが、苦笑いで愉しんでいただければ嬉しいです。 ◆なお、大変申し訳ないのですが、夏目漱石の『こゝろ』がどういう物語であるかをわかっていないと何がなんだかさっぱりわからないかもしれません(^_^;)。『こゝろ』にはどんな登場人物がいてどういうあらすじなのかを把握しておいていただければ、より物語を愉しめると思います。 ◆僕自身は、中学生のときに初めて『こゝろ』を読みました。それから四十年、たぶん一年に一回は読み直しているような気がします。間違いなく僕の小説より面白いですから(^_^;)、ぜひどうぞ。あ、お買い上げの際にはぜひ〈ちくま文庫〉でどうぞヽ( ´ー`)ノ。
|